短歌
20201102 低空飛行 なにひとつうまくならない早起きもこんにちはって一言すらも しゃくり上げながらここからどうやって泣きやむべきか考えている なんだって平気な人だと思ってた に笑ってみせちゃうからか、敗因 乏しさを照らされるのがこわくってまぶしい…
20201010 かもめの玉子 透きとおる冬のつめたい外殻に明るいひかりの色が隠れる 食べ終わることが惜しくていつまでも手のひらにあるかもめの玉子 鍵盤を跳ねてく指のまばゆさはまあるい菓子の白さと同じ 20201011 鳥 柵の中囲われている人間をハシビロコウは…
・うたの日参加分は「題」と示してあります ・同日に複数作った場合、提出したものに*をつけてあります 9/3 *へっちゃらな顔で立ってるきみの耳じわじわ赤くなるのを見てた「恥」 うずくまる人にも見えた粗大ごみ回収を待つ誰かの布団「布団」 9/4 腐食し…
20200802 引き延ばしたかった それじゃ、と言いおいてzoomが切られるまでの数秒 不揃いな言葉をいっそ手離してしまえば楽になるはずだった ぽっかりと浮かぶ通知をたしかめて眠った夜のぬるい体温 だいじょうぶ、の言葉を口に出してみる だいじょうぶ、まだ…
剥がれてたネイルを落とす今週も知らないうちに傷ついている ポケットがあってよかった繋げない指に行き場を与えてやれる あの家に咲いてる花って覚えてて名前を呼ぶことだってできない 日曜が終わってしまうむなしさを飼いならせずに大人になった 灰色に染…
えらかった、がんばったねと言うかわりわたしはわたしの頭を撫でる コンビニで偽のフレンチクルーラー買えば案外悪くない夜 さみしい、と聞かれてべつにさみしくはないなと思う 強がりでなく (改作)さみしい、と聞かれてやっと孤独だと初めてわかる強がり…
食べちゃうか、食べちゃおうって思いきりナイフを入れる夜のキッチン まだ青いかんじがするねクリームに埋もれるメロンの冷たいかたさ 気付かないうちに終えてた春のこと考えながら食器を洗う 古ぼけた毛布を撫でたときみたくひとつも傷付かなくていいよ …
もう嫌だってどんなに強く思っても腹は間抜けな音を立て鳴る 深夜までやってる店の明るさに帰る夜道が照らされている ラーメンと炒飯大きく口を開けばくばく食べる泣かないように 美しいものは幾らもあると知る部屋の窓から見る昼の月 しょうがない、しょう…
行きたくもない場所へ行く本当にいきたい場所への切符をなくす 深海ってこんなところか配信の画面が光る部屋の天井 (本日もマスクの入荷ありません)非現実を刷り込む作業 ぼそぼそと喋って歌うゆるやかな声にやわらぐ一緒に笑う (口封じみたいで癪だ)満…
ここじゃないどこかで会ったらよろしくねじゃあねばいばいさよならまたね よたよたと歩くぜんぶが嘘になる泣けもしなくて喉が詰まった 目の前で瞬く星は過去のもの掴まなかった未来さよなら
また来ます、とおどけて振った指を見るシスターの目は青くあかるい また来るね、と言うときいつも怖くなる 祈るみたいに繰り返してる 抱きしめた体が細く脆くってこんなに小さかったのだっけ パスワードが正しくありませんもう何にも正しくはありません
カーテンを抜けて白金の光さす照らされるほどいいものじゃない 失ってしまったひとの歌こそが救いであることの幸いを しあわせであったならいい、わたしの知らないいつかのあなた、祈るよ。 すきなものランキングとか作ったら絶対上位になる歩道橋 痛みどめ…
祖母の家みたいなにおい思い出はない駅の改札を出て もうなにも考えないでいたい夜さざめきでさえうつくしくなる 自分とは違う温度がこわくって黙ってずっとしがみついてた
白線の内側黄色いブロックに沿って並んだ息がしにくい すきです、と答えればふと胃の浮いてああすきなんだ、と気付くふわふわ 五種類の中から選んでくださいね 光っているの、鳥と、ケーキと いつか行こ、みたいな未来はどのくらい親しくなったら話していい…
ほんとうは黙っていたら変わらずにいられたのにね、ごめんね、すきだ ごめんねと言って塞いだきみの目に映ったぼくが泣いていたこと 困らせるだけだろうってわかっててそれでも告げるぼくでごめんね 「 、」って言いかけたその唇のかたち わかるよ、だけどど…
かみさまを信じていると言い切れず惰性で通う主日礼拝 スカートは折りたい人を騙したい少女を辞めて五年経つのに まぶしいな、って顔して笑う目の緩み きみのなかではいちばん好きだ 食べてってあげたケーキも肉まんもぜんぶふたつに割るのがきみだ 「靴紐は…
許せないことが増えてくきらきらと輝くものを愛せなくって 人型を取れないままに家を出てだらだら歩くはねられるまで キーを打つ指の冷たさWordは白く途絶えて干からびていく (星砂のようだね)打っては消して、点滅、まぶたに焼きついている まるで住む世…
ひんやりと冷えてく手先まっくらな明日以降を愛せなくって こうすればああすればって言われてもそうなれなくてここにいるのに 憧れで大好きなひとだからこそ隣にいると消えたくなった 空回る言葉ばかりが口をつき早く帰って寝たいとおもう わかってはくれな…
ぼくたちの境にきっと膜がありぼんやりするうち跳ね返される なんだってなれると言ってくるひとは大概なにもなれないままで 絡まったそのままいつか解かれる日を待つここはまだ薄曇
行かないでここにいてって祈ってる果てまで飛べるひとよ、おねがい 諦めもやむなし消えてしまっても誰も泣いてはくれないぼくは ここにいて何になるかはわからないまま日に九百の細いため息 目覚めればうっすらとした絶望がおはようと手を振ってわらった シ…
必要とされたいなんて幻想を後生大事に抱えているな 自分だけ愛されたいと思ってるずるい自分を知っているのに 特別と言ってほしくてたまらない/お前ごときがいて何になる ぺちゃんこになっても息は続いててそれがいいかはわからないけど 欲しがってみせる…
踏み荒らしぐちゃぐちゃにしていいなんて誰が許した百字で述べよ めちゃくちゃになってしまえと願うほど裾のほつれが気になってゆく いつまでも鳴らない風呂の給湯を待ちつつ膝を抱えて眠る さみしいかどうかはわたしが決めるから勝手に値踏みして哀れむな …
食べたくもないのに口に押し込んで蓋をしているこの生きづらさ 壊れても治せばいいと諭されるいっそ不要と言い切ってくれ ぼろぼろになっているけど目をそらしそれが個性と嘯いている 不良品以外返品交換はしてくれないが捨ててはくれる 縫いつけてしまえば…
つめたい色をした湖に入る湯船に沈むみたいに軽く(ほんとはしににいくというのに) ああなりたいこうなりたいってガワだけの理想語って結局は寝る なんにもできないと思い知るいつもそれで正直ほっともしてる 思いつく限りの不良夕飯を無視して腹に詰め込…