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短歌と感想ほかまとめ

log:202403 アイドル短歌

0303
アイドル短歌ワンドロ「ライブ」

ぐしゃぐしゃに潰れた肺が砕かれた背骨が息を吹き返してく
ここに来るだけの己でいられたか またここに来る覚悟はあるか
明滅をこの手で変えていくようにわたしの舵はわたしがとれる



生きていく理由をきみに託さない 今日もおんなじように誓うよ



0313
アイドル短歌題詠「白」

ひらひらと振られた指は宙空を泳ぐ白魚 鱗がひかる
吐き出した息が世界を染めてゆく どうかあなたの思うとおりに
紙吹雪 ほんとは真っ白だったこと秘密だよって指を鳴らして



いい加減白状します まだ好きじゃないのは嘘です君がすきです
もう好きじゃないのに選ぶ君の色 こんなのぜんぶ白々しいね



0323
アイドル短歌ワンドロ「楽曲」
ここに/SUPER EIGHT

いやんなるくらい歩いた通勤路にさえ朝日は差し込んでくる
もうずっと会えないかもね だからって立ち尽くしてるわけはないんだ
感情はすこし遅れてやってきてそういや痛いだなんて思う
あと一歩、まだもう一歩 走ってもどっかに行ける訳じゃないけど
吸ってからゆっくりと吐く涙ってたまに壊れたみたく流れる



0324
アイドル短歌ワンドロ「楽曲」
Boogie Woogie Baby/Snow Man

恐ろしいものなど何もないのだときみは岸辺に立って手を振る
お嬢さん、どうかこの手を取ってくれ 見たことのない景色をあげる
真っ白なまんまじゃいられないとして僕らが派手にまく紙吹雪



題:村上信五さん

眼差しは遠く交わることがない 背中の熱であればいくらか
手のひらに収まるものではいられないその身ひとつでどこまでも行け
ゆるやかにかたちを変えていく雲の近くで深い息をしている
ぐしゃぐしゃに混ぜた前髪 大丈夫 いい子でなんていなくてもいい
真っ当に生きてくだけだ人混みのなかでもどこか板の上でも



0325
Snow Man 宮舘涼太
お誕生日おめでとうございます!

波風に乱されようが砕けない心音だけを確かめて行く



題:メンバーカラー

白熱灯よりもLEDよりもまぶしい色をしたきみだった
正しさの暴力性を知っている それでも言葉を探してしまう
あ ひかり 日向にできた影を見て強く照らされてるとわかった
心臓を見たことはまだないけれどあなたにはあの赤が相応しい
ドロップスジェリービーンズかろやかに跳ねて色づく頬の血色
ほんとうかどうかはきみが決めること境界線を指でなぞった
どこまでもどこまでも空、もしくは海 抜けてくように広がるきみの
常緑樹 変わらずにいることなんてできない、だけど、それでも、僕ら
ペンライト灯さなくてもきみのいる場所は確かに見えていたんだ



0330
アイドル短歌ワンドロ「ない」

特別と呼びたいひとは板上に立ったあなたの他にはいない
このときを特別だって思えたらあとは何にも構いやしない



降り注ぐ紙吹雪さえまばゆくて痛みのことは覚えていない



0331
アイドル短歌ワンドロ「五感」

本当に光って見えた豆粒とおんなじだけの姿としても
ラジオから流れる声のふやけかた素っぽいなんて思ってごめん
あなたっぽい見た目で選ぶフルーツのケーキは想像より甘くない
あの春のにおいがずっと残ってて桜を見ると喉が詰まった
触れられる距離がぼくには恐ろしいあんまりきみと地続きだって
こういうのぜんぶ忘れていくんだね あなたの気配も知らないままに