0103
後ろにはきみがいるからはじめての駅で降りてもこわくなかった
→ドラクエの隊列組んだぼくたちは知らない駅もこわくなかった
おにぎりにするからぜんぶ食べちゃっていいよ、こっそり泣いてもいいよ
カーテンを開けばきみにいつだって今夜見ていた陽が差すだろう
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祝宴の用意はすべてととのってあなたをおいて行くのかおれは
とりたてて好きでもなかった飯のくせ今日に限ってやたらとうまい
しみ抜きをしたってシャツは余所者の色を残してもう戻らない
0104
口角は上げなくたってだいじょうぶくそったれって言っとけば吉
会社のとおんなじ音というきみの耳を塞いでスマホを壊す
すりへった室内履きを捨てに行くぜんぶやめちゃうこともできるよ
0106
鎮痛剤2錠1日3度までキャパシティならとうに超えてる
ブラインドおろした隙間から光こんなんひとつもいらないのにね
冬物のコートを着込む外側にあるものぜんぶ滅んじまえよ
0109
少しでも汚れたら即すげ替える新たな自分に疲れちゃったね
新しい顔が収まるここからは人生××回目の僕だ
出来たてのパンはわたしの腕の中美しいままこと切れてゆく
0114
シャンプーの詰替くらいちゃっちゃっとやれる自分に生まれたかった
おはようもおつかれさまも喉元で今日はあんまり平気じゃないね
頼んでもないのに伸びる前髪も爪もぜーんぶ切った、ばいばいわたし
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題:カントリーマアム
違うとこばっかのきみといたかった やけにココアが残っちゃってさ
ぼろぼろになってごめんね(目が赤い)あなたに貰うカントリーマアム
好きなほう選んだ指がまっすぐで見とれてたって言えばよかった
0116
題:ガラスとカラス
にびいろのかたまりとして丁寧にかけ直してる鳥よけネット
アスファルトだって光って いつまでも上手くならないままの息継ぎ
おそろしく壊れやすいね散らばったガラスをきみは避けて歩いた
0117
題:こたつとみかん
面白いテレビがなくてやんなるね ねむたい声をゆっくり食べる
人工のオレンジ色に照らされてぼくらは別の生きものだった
ちょっと前までは地肌にふれていた指でみかんを雑に剥いてる
0119
題:氷
終売になってたアイスばいばいと何度言えずにしまうんだろう
あ みぞれ 別に信じてくんなくて(傷つかなくて)いいことばっか
もう二度ときみに会わない 残された氷が溶けだす前に帰るよ
0123
西友の棚で迷子になったって何にも決めらんなくてもいいよ
ありったけ買い物かごに詰め込んで立ち向かってくブルーマンデー
とびきりの砂糖を日ごとまぶしては週五勤務を補強している
0125
題:手触り、五感
風が強い 耳を塞いでくれた手もざわめいていて怖かったこと
おいしくはないけどべろを触ってく指のかんじはいやじゃなかった
後ろからしがみついてるときにした君のニットの湿ったにおい
0127
つけボーはバランスなんて考えず好きに食べなよ好きに生きろよ
チョコあ〜んぱんってハモってくれたので残りはぜんぶきみにあげよう
ジェネリックだろうが光る、光ってる ぼくの国にもある萩の月
0128
「君に出会うことなく心乱されることなく平和に暮らす世界線があったかもしれないのに君に出会ってしまったためにわたしは!」っていう短歌ください
壊れてくのって案外気分いい 分解酵素持たずにわたし
0130
題:ソース/ケチャップ/マヨネーズ
大丈夫まだ死んでない うす暗い給湯室で落とすケチャップ
美しいものになりたい器からこぼれ出ているオーロラソース
なくされたところに愛は含まれるカロリー1/2マヨネーズ
0130
題:かむかむレモン、慢性的な頭痛
ほんものじゃないから何だ ぴかぴかのレモンを強く歯の奥で噛む
泣いたって頭痛がしないお薬を出しておきます糖衣あります
皺になりにくい素材のシャツを着て何度もわたしを抱きしめている