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短歌と感想ほかまとめ

log:202401 短歌

0101
花吐き病

泣くよりも先に気配がやってくるときの正しささえ沈丁花
誰からも見られずに咲く立葵 手折ったときがいっとう好きだ
花びらが気管に入り粘膜の味がどんなか分かんなくなる
正解を知らないままのきみが塗る金木犀のハンドクリーム
ほっそりとした首筋を撫でていく寒椿にも痛みはあるか



0103
いちごつみ20首 偶数首:遊佐さん

【1】かんたんに折れる鎖骨の凹凸を他の誰にも知らせずにいる
【2】私など食べるか寝るか起きるかで 誰か代わりに生きてくれたら(誰)
【3】冷やごはんレンチンしないまま食べる泣きわめいても妥当な理由(食べる)
【4】杖を持たないとまっすぐ歩けないぼくの生きてる理由はどこに(理由)
【5】わからないことだらけでも日々を行くなるだけ武器は持たないでいく(持たない)
【6】こんなときどういう武器を選ぶのか教わってない涙は透明(武器)
【7】透明なコップに満たす水道水にさえ光は内包される(透明)
【8】神様の光がここに届かないそれでも私目を開けている(光)
【9】届かない郵便を待つ明日にも明日があるのを恐れはしない(届かない)
【10】満月を指差し「故郷」って言うの、ほんとに帰る恐れがあるな(恐れ)
【11】何もかもだめになっちゃえ 満月のせいにしたって誰も責めない(満月)
【12】だめですか?落ち葉をわざと踏んでってちっちゃく憂さ晴らしをすること(だめ)
【13】きみに会う日付にちっちゃく丸をしてやっぱりおっきく書き直しとく(ちっちゃく)
【14】いま見たら日付の横に雨マーク それならわざと傘は持たない(日付)
【15】だとしても虹が出るのは足元にうつむく先に雨の向こうに(雨)
【16】太陽で目が痛いからうつむくも覗き込まれちゃうから意味ない(うつむく)
【17】きみの顔覗きに行くよ苦笑いだって笑顔と人は呼ぶだろう(覗き)
【18】あなたの名前を呼ぶときいつもより大きい声が出せちゃう不思議(呼ぶ)
【19】不思議って一緒にいるといくつでも たとえばこの手を繋げてること(不思議)
【20】たとえばきみが大事だと言うことがかんたんなんて知らなかったよ(たとえば)



0103
題:エレベーター

開ってボタンをずっと押している私をみんな追い抜いていく
もう一回押したらなかったことになる ならない なる なってくれない
たぶんそうだけどお互い他社さんの顔であっさり押しとく閉



題:餅(のびる/風物詩/ちょっと危ない)

ふくれてるきみの頬のがおもちよりよく伸びてって ごめん、降参
好きだけどちょっと飽きちゃうこともある、なんてね、これはおもちの話
やきもちも餅には違いないってこと うっかりしたら息も止めるの



0104
題:夜明け

まぶしさの方へまっすぐ行けばいい始発電車はトンネルを出る
こわくないこわくないから新聞の落ちてく音を救いとしたい
真っ暗な中より糸の先ほどの光がまぶたに触れれば夜明け



0109

完全じゃ完全じゃないどもったり噛んだり舌を千切れなかったり
肘下のうすくてやわい皮膚になら爪を立ててもいいと習った
かなしいのほんとうなのに泣き出した瞬間ぜんぶうそっぽくなる


0112
癖短歌(「駆け落ち」という言葉がよぎっているけれど絶対に口に出さないし実行もしないふたり)

降りることこの先一生なさそうな駅に行きたい いきたいだけだ
終電がいつか知ってる僕たちは曽根崎だってそらんじている
行き先があるから違う ちがうよね 繋いだ手だけ軽く揺らして



0113
お題:行き帰りのバスで話すくらいしか関わりのない(けれどそこで家庭での愚痴をふんわり聞き及んだりしている)、距離感のふたり

ぬるまった炭酸水を飲みくだす待っててなんて言えやしないのに
学年と停留所だけわかってる、あとはもうちょい喋りたいのも
弟の名前を先に知っていてこの子のことはまだ呼べてない
いないのに押さないとって思ってる点かないままの降りますランプ
何組、と初めて聞いた いまさらと笑ってくれるだけでよかった



お題:台詞「それでもよかったのに」「ひどいひと」「幸せになろう」+関係性「お互いに肩を並べて隣にいて同じ景色を見ていると思ったのにいつの間にか見てる景色が変わってしまった2人」

幸せになろうね四葉のクローバーあるだけ摘んできみにあげるね
泣くほどのことじゃないってあやしてた僕は愚かな道化師だった
こんなときばっかり口が回るのをひどいひとって詰ってもいい
クラウンに抱きしめられて息絶える僕はそれでもよかったのにね
君とならどこまでだって行けるって思ってたのはほんとだったよ



0114
お題:「パスタあと何束あった?」という台詞

そんなには買わないくせに買いもの用カートを引くの大好きだった
パスタあと何束あった? 覚えてる、このときはまだ日が差していた
茹でこぼす茹でこぼされる熱湯の側にいつから立ったのだろう
スプーンを使ったところでおんなじのぜんぜん上手く巻けないパスタ
賞味期限切れのソースをぶちまけてようやく泣けたわんわん泣いた



お題:煙草

大切にしたいんだってそれっぽく だけど手遅れだよって思う
首筋に指を這わせた真綿よりきみにやさしくできるだろうか
副流煙 そばにいるから意味のある言葉は他になにがあるっけ



0115
お題:対角線にある二人の共通点が見える瞬間

(あ、ほくろ)鏡写しになる位置にきみのほくろがあって気になる
ばーかって呟くイントネーションがそっくり同じで振り向くふたり
同じだけ進んで同じだけ戻る永遠にする人生ゲーム
補色ってどっちがどっち? ふたりして相手の色のが好みだなんて
向き合ってばっかじゃだめなこともある例えばきみと手を繋げない



0116
映画 PERFECT DAYS

叶わないものとわかっていたくせに今度こんどと重ねた声は
さよならのそぶりを何度見ただろうこの先何度思い出すだろう
まぶしいと目を伏せるにはやわらかくそれでも忘れがたい木漏れ日



春になったら#01

泣き声で始まっていくものだって這い出る先を光としたい
今はまだ両の瞳が滲むまで笑ってたいよ 笑わせててよ
何回のゆびきりをして叶えたかきっと教えて春になったら



0123

爆速でつんでくいちごはあまくって歯痛になっても食べてんだろう
Ctrl+C Ctrl+V Ctrl+Z(コピペして元に戻して)コマンドが使えないってバグのある日々
耽溺、の意味を調べる不意打ちで(よくないことに)なんて言われる



春になったら#02

どんまいとほんとに思っているとおり言ってくれるの僕は好きだよ
友達のまんま大事なひとになる分岐はどこにあったんだろう
春までのうすい日差しが白波とおんなじくらいまぶしい いたい



0125
お題:恋人との予期しない別れ

寝室のカーテンくらい引いといてって言ったの先週だっけ
ぬるま湯じゃうまく溶けない(知ってるよ)インスタントじゃやっぱだめだな
ぐちゃぐちゃな布団を直せば直すだけ熱は逃げてく 君はいなくて、



0126
お題:まつげ

まばたきの度にちかちかするようできみは最近やけにきれいで
まつげって触れようとした瞬間にひとのものって思ってしまう
マスカラを念入りにして式へ行く決して泣いてなんかやらない



0127
お題:「冷蔵庫に生クリーム(泡立て済でもそうでなくても)がある」という状態

まだ今日も特別になるスーパーでらくらくホイップ買って帰ろう
へいきだよ シフォンケーキを敷きぶとん生クリームを毛布とおもう
とろとろとねむりにおちる明日には苺のショートきみにあげたい



お題:朝焼けor 朝の月

なんらかの手違いがありここにいる始発電車はしばらく来ない
お月さま取り残されてかわいそう、とかってわたしを棚に上げてる
朝5時のマクドナルドは明るくて何にも見たくなかったのにね



0127
いちごつみ50首 偶数首:昨さん



0130
春になったら#03

ほんとうにはしゃぎたかったきみはもういないのだけどそれでもいいか
何回も書き直してはぐちゃぐちゃになってく手帳 消したくないよ
大切にしたいのだって嘘じゃない、ないけど、ごめん、ごめんね、ごめん