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短歌と感想ほかまとめ

log:202403 短歌

0301
「短歌桜」参加作

目の前をよぎる桜はあの街のまたは舞台の上にのみ咲く


0302
花束を抱いたあなたはまっすぐに飛び立ってゆく この先は春

にせのほし題詠
001 正義
善いものになりたいなれない全身に真綿の縄が絡みついてる
002 告解
あやまったやつから楽にしてやれる告解室の重たい扉
003 口ずさむ
特別なところは何にもないぼくの名前もきみにかかれば歌に
004 ピッチ
息が詰まる。僕の奏でる音程はいつも正しい場所をなぞった
005 カトラリー
特別なときに食べると決めているケーキにそそぐ明るいひかり
006 滲み
くたびれた体をソファに投げ出してわたしは部屋の大きな滲み
007 いいひと
(どうだって)いいひとなんていませんよ 本当に、って言ってやりたい
008 予感
ああきっとわたしあなたをすきになる たとえば揺らす爪の血色
009 トランジット
乗継ぎを待つあのひともあのひともまぶしいみんな行き場があって
010 翼
ぼくだけの飛べない翼、いいでしょう あなたの分はあなたが誇れ



0303
にせのほし題詠

011 ポーカーフェイス
飄々、とたぶん書けないきみなのにわたしばっかりこんなに好きで
012 ロードムービー
毎日が休前日とするならば暗くならない映画をえらぶ
013 砂の城
この城をいつか崩れるものとして建てたことさえ抱きしめていく
014 グリッター
偏光をきみは見ないね 知っている それでもグラデはきちんとつくる
015 紡ぐ
一音を決めかねる夜があるためにわたしの骨は成り立っている
016 やきもち
やきもちを焼いたところで許されるあの子みたいになりたかったよ
017 罠
かわいげの意味を調べておそらくは「-がない」例だと気づいてしまう
018 奇跡
両の手に残ったままの生傷をいいものみたくされてたまるか
019 くすぐったがり
こそばゆい顔して笑ってくれるから何回だってほめちぎりたい
020 きらきら
きみにならシュガーレイズドドーナツのレイズド部分をあげたっていい



短歌ワンドロ「ライブ」

キーボード、PC、機材に囲まれていくつも音を奏でる天使
舞台上スポットライトを浴びながら天使が低く鳴らしたベース
カウントが天使によって刻まれる スネアドラムのかすかな響き
週末になったらふっと現れる天使はギターを弾いてるらしい



0305

深く息を吐いて潜ったおふとんの奥に銀河があるのはひみつ
すり減っていったわたしの断面がせめてまあるくありますように


0309
春になったら#08

おなかから大きい声を出していくこわいばっかでいられなくって
動けなくなっちゃう前にエプロンを自分ではずし襷としたい
焼きつける、のは比喩じゃなく 眼裏のあなたを何度思うのだろう



0310
お題「ホワイトボード」または「黒板」

縦書きのときだけ無敵 左手で握ったチョークは迷わず動く

うっすらと浮かんだきみの落書きのゆるいカーブを指で辿った
日直の名前を大きく丁寧に 呼びかけられもしないあなたの



癖短歌(例え一緒にいる事で不幸になったとしても側に居たい考えすぎる人と、その人が幸せでないなら一緒にいなくても構わない能天気な人のすれ違い)

この先はひとりで行くよ、大丈夫 泣いてくれなくたっていいんだ
桜の木 たとえば重い亡骸をおまえと一緒に埋めたっていい
指先が冷えてていたい いたかった 離れてやっと気づくだなんて



0314

告白の仕方も知らないぼくなのに何でか愛の手紙は書ける


0317
春になったら#09

スターにはなれなくってもきみたちがいてくれるならぼくを選ぶよ
ファインダーの向こうがぼんやり光ってて撮っとかなきゃって強く思った
指きりの代わりいくつも口にした、春になったら、が忘れらんない



0318

平日のやり過ごしかたを教えてよ あんまり難しくないやつを


0321
春になったら#10

わがままのオンパレードを人生でたったの一度許してほしい
ただいまが宙に浮かんで消えていくからっぽの家 はやく帰ろう
ああ そうだ ぼくたちを見る瞳には光が多く含まれていた



0327
題:青

壊れちゃう一瞬前の瞬きの ブルースクリーンは美しかった
この春に色を塗るなら透きとおる朝の光の淡さを選ぶ
ほんとうは違う色だと気づいてる それでも青って呼んでてあげる
底抜けに明るい空のただなかでからっぽになるまで泣いとけよ
永遠にしたくて肌の刺青を撫でてくおれを謗ってもいい



0330
題:雨になったら

来週の天気予報がようやっと雨になったらあなたに会える
どこにでも売ってるビニール傘だってきみから借りたがつけば特別
髪の毛の先から光がこぼれてく拭いちゃう前にかるく見惚れた



春になったら#11

一歩だけ先に進んで待ってるよ 春の空気を吸いこみながら
いくつもの、春になったら、の営みをあのとききっとぜんぶ愛した
ぼくたちは光を焼きつけ生きている永遠なんてないとしたって



0331
題:岸

いくつもの生活がありいくつもの感情があるひとりの岸辺
最後までまぶしく過ごす人にさす強いひかりを覚えていたい
こんなにもひとりの人の幸福を願えた おれはそれでよかった
結局は敬称付きで呼んでいて誰も何にも憎めなかった
さっぱりと笑った子から溢れてく春の陽気に包まれている

log:202403 アイドル短歌

0303
アイドル短歌ワンドロ「ライブ」

ぐしゃぐしゃに潰れた肺が砕かれた背骨が息を吹き返してく
ここに来るだけの己でいられたか またここに来る覚悟はあるか
明滅をこの手で変えていくようにわたしの舵はわたしがとれる



生きていく理由をきみに託さない 今日もおんなじように誓うよ



0313
アイドル短歌題詠「白」

ひらひらと振られた指は宙空を泳ぐ白魚 鱗がひかる
吐き出した息が世界を染めてゆく どうかあなたの思うとおりに
紙吹雪 ほんとは真っ白だったこと秘密だよって指を鳴らして



いい加減白状します まだ好きじゃないのは嘘です君がすきです
もう好きじゃないのに選ぶ君の色 こんなのぜんぶ白々しいね



0323
アイドル短歌ワンドロ「楽曲」
ここに/SUPER EIGHT

いやんなるくらい歩いた通勤路にさえ朝日は差し込んでくる
もうずっと会えないかもね だからって立ち尽くしてるわけはないんだ
感情はすこし遅れてやってきてそういや痛いだなんて思う
あと一歩、まだもう一歩 走ってもどっかに行ける訳じゃないけど
吸ってからゆっくりと吐く涙ってたまに壊れたみたく流れる



0324
アイドル短歌ワンドロ「楽曲」
Boogie Woogie Baby/Snow Man

恐ろしいものなど何もないのだときみは岸辺に立って手を振る
お嬢さん、どうかこの手を取ってくれ 見たことのない景色をあげる
真っ白なまんまじゃいられないとして僕らが派手にまく紙吹雪



題:村上信五さん

眼差しは遠く交わることがない 背中の熱であればいくらか
手のひらに収まるものではいられないその身ひとつでどこまでも行け
ゆるやかにかたちを変えていく雲の近くで深い息をしている
ぐしゃぐしゃに混ぜた前髪 大丈夫 いい子でなんていなくてもいい
真っ当に生きてくだけだ人混みのなかでもどこか板の上でも



0325
Snow Man 宮舘涼太
お誕生日おめでとうございます!

波風に乱されようが砕けない心音だけを確かめて行く



題:メンバーカラー

白熱灯よりもLEDよりもまぶしい色をしたきみだった
正しさの暴力性を知っている それでも言葉を探してしまう
あ ひかり 日向にできた影を見て強く照らされてるとわかった
心臓を見たことはまだないけれどあなたにはあの赤が相応しい
ドロップスジェリービーンズかろやかに跳ねて色づく頬の血色
ほんとうかどうかはきみが決めること境界線を指でなぞった
どこまでもどこまでも空、もしくは海 抜けてくように広がるきみの
常緑樹 変わらずにいることなんてできない、だけど、それでも、僕ら
ペンライト灯さなくてもきみのいる場所は確かに見えていたんだ



0330
アイドル短歌ワンドロ「ない」

特別と呼びたいひとは板上に立ったあなたの他にはいない
このときを特別だって思えたらあとは何にも構いやしない



降り注ぐ紙吹雪さえまばゆくて痛みのことは覚えていない



0331
アイドル短歌ワンドロ「五感」

本当に光って見えた豆粒とおんなじだけの姿としても
ラジオから流れる声のふやけかた素っぽいなんて思ってごめん
あなたっぽい見た目で選ぶフルーツのケーキは想像より甘くない
あの春のにおいがずっと残ってて桜を見ると喉が詰まった
触れられる距離がぼくには恐ろしいあんまりきみと地続きだって
こういうのぜんぶ忘れていくんだね あなたの気配も知らないままに

storyteller(物語ベースの相互題詠)のこと

2024年2月に、遊佐さんと「storyteller」=物語ベースの相互題詠をしました。
その記録及び自作解説をしたいと思います。

はじめに、これは今回の記事に限ったことではありませんが、解説とは言いつつも、そう読まなければいけないという訳ではありません。もちろん、違った解釈をしたらだめということは決してありません。わたしの短歌やブログを読んでくださる方には、自由に楽しんでいただければと思います。



1) はじめに storytellerって?

ふっと思い立ってしたこんなポストが始まりでした。


もしこれをどなたかと出来るなら、ということで、考えてみたルールがこちら↓
<ルール>
・1ポスト(140字)程度の設定を作る
・設定の形式は自由。箇条書きでも短文でも
・作った設定を相手に渡す
・もらった設定から連作を作る
・連作のボリュームは5〜10首の間なら自由

遊佐さんが一緒に遊んでくださることになり、相談の上、上記ルールでやってみることに。
それぞれが考えた設定と、それに沿って作った作品は下記のとおりです。

2)設定を作る 作成:遊佐さん

・性別はなんでも
・高嶺の花と道端の雑草
・二人の接点は同じクラスであることだけ
・雑草は花のことをこの世のなによりも美しいと思っている
・逆に、友達のいない花にとって、たくさんの人と仲のいい雑草は憧れの存在
・ある日、二人は行きの電車が同じことを知り、それをきっかけに距離を詰めていく--……

3)設定を作る 作成:しま

・特別にはなれないとわかっている話
・AとBは恋人同士だが、Aには別の相方(親友・バディ・シンメ等)Cがいる
・AとCは決して恋愛関係にはならないが、AにとってCはずっと、他の人とは違う特別な存在
・ただAにはその自覚があまりない(当然と思っている)
・ということをBは最初から知っている

4)遊佐さんの設定から連作を作る 作成:しま



たんぽぽの明るい黄色はどこででも軽やかに揺れひどくまぶしい

木蓮 頬にうっすら朝がふる美しいってこういうことだ

「高嶺の花」の子を白木蓮にするのはすっと決まった。花言葉も調べて、結構よさそうだなということでそのまま採用。
「雑草」の子を、雑草とはいえかわいい花にしたいな…と思って浮かんだのがたんぽぽだった。ハルジオンもちらっと思ったのだけど、花言葉がしっくり来なかったので没。
車内でも教室でもどこでも目に入る、明るい女の子と、立ち姿と横顔の美しい静かな女の子のイメージ。

教科書に載っていた詩を思い出す貴方の声はひばりのおしやべり

いつだって凭れずにいる隣にはぽつんとひとつ空席がある

話し声をうるさく思うのではなく、明るくて楽しそうでいいなと感じていることを表現したかった。「ひばりのおしやべり」は山村暮鳥「風景 純銀もざいく」から。
木蓮の子は周りからちょっと話しかけにくい孤高な存在と思われている。とはいえ本人は普通にしているだけ。でも周りの雰囲気は分かっているから、無理に群れることもしない。それを見ているたんぽぽの子は、でもちょっとさみしいんじゃないかな?いつか話してみたいなあと思っている。

繰り返し頭のなかで呼んでいた名字がわたしのくちびるに、いま

朝礼の点呼も絶対かなわない声量だった あなたがわらう

お互い相手のことが気にはなっていて、でも行動に移すのは木蓮の子が少し早かった。頑張って声をかけたのだと思う。声がうわずったりひっくり返ったりしないように気をつけながら。
そのことがうれしくて、びっくりして、思わずものすごく大きな声で返事をしてしまうたんぽぽの子、というイメージでした。朝礼の点呼、ある程度は先生に聞こえるように声を出すと思うけど、そんなの比べものにならないくらいの大音量。

はじめてのおそろいかもってこっそりと言われて撫でる遅延証

8時5分6両4ドア待ち合わせ、の前にささっと直す前髪

電車のなかでの出来事をいくつか。電車が遅れて嫌だけど、一緒にいるから楽しいし、(遅延証明とはいえ)おそろいができたことも相手もそれを喜んでくれているだろうこともうれしい。
親しくはなってきたけどまだ少しよそゆきなかんじ、で「ささっと直す前髪」にしました。あと、なんとなく都内の地下鉄イメージだったので「6両」くらいかな?とこの位置にしてみた。この辺はフィーリングです。

ずる休みじゃなくてもっといい名前つけたいねってふたり一緒に

お休みの連絡はせず海に出て(次は終点)ともだちになる

ふたりが普段使っている電車は、最終的には海の方までつながっているイメージ。ある程度仲良くなったある日ふっと、学校をサボって終点まで乗って行く。
「ずる休み」には違いないんですが、ふたりにとってはもっといいもので、かつ特別なものでもあるので、何かいい呼び名を考えつつ電車に揺られている。
多分タイプも違うし一緒にいて何で?と言われるふたりなのだけど、お互いしっくり気が合って、この後一生の友達になる、そんなイメージでした。

5)しまの設定から連作を作る 作成:遊佐さん


6)まとめ

物語ベースの相互題詠、考えていくのが難しくもありましたが、とっても楽しかったです! 設定をもらうのも考えるのも、そこから作るのも面白い。かなり創作寄りになるので、普段短歌・アイドル短歌を詠むのとはまた違った感覚がありました。
もしご自分でもやってみたい! と思われた方がいらっしゃいましたら、下記のポストなどをご利用いただければと思います。



何かあればしま個人のDMもしくはお題箱まで。
odaibako.net

#読む短歌 スペースのこと(#自選10短歌集2023 編)

以前Twitter(X)にて「#読む短歌」というスペースを開いていました。
音読していいよ、とお知らせくださった方の短歌を、わたしが口に出して読む、という試みです。
そのときのまとめはこちら↓
hashi-716.hatenablog.com


さて、2024年1月、「#自選10短歌集2023」が公開となりました。
note.com


その際、「#自選10短歌集2023」参加者のうち、音読してもいいよとお知らせくださった方の作品を読みたい! と考えました。
そのときのお知らせ要項がこちら↓


結果、ありがたいことに、21名分を音読できることになりました。
今回はそのときのまとめとなります。
本当に簡単なものですが、いつ・どなたの分を読んだのか分かるようにしてありますので、参考になれば幸いです。

#自選10短歌集2023 については感想も書いていますので、よければぜひ↓
hashi-716.hatenablog.com


1)2024年1月20日(土)

10名分 1人あたり2~3首ずつ
003 昨さん/005 碓氷さん/006 独活部さん/018 おばけちゃんさん/026 遊佐さん/030 古迫ねねさん/032 千愛さん/034 夏野さん/035 線香さん/036 yugureさん


2)2024年1月21日(日)

11名分 1人あたり2首ずつ
037 いとさん/043 残星さん/044 わらびもちさん/045 入瀬さん/049 月食さん/050 偏頭痛さん/051 杜さん/054 あきさん/057 maruさん/059 ぺちかさん/076 飄さん



久しぶりの「#読む短歌」、やっぱり楽しかったです。黙読するのとはまた違った感覚がある。いろいろな方の短歌にふれられること・自分の中にあるものを表現すること、本当に貴重だなあと思います。また機会があれば音読していきたい。

何かあればしま個人のDMもしくはお題箱まで。
odaibako.net

癖短歌のこと

突然ですが、これを読んでくださっているあなたは、癖(へき)をお持ちですか?
そもそも「癖」ってなに? と思われるでしょうが、わたしはこの言葉を「自分の中に深く根差している多少偏った好み」といった意味で用いています。辞書的な意味合いとはズレているかと思いますので、平たく言えば「どうしようもなく好きなもの」くらいで捉えていただければ幸いです。
ただ、これだけだと具体的にイメージしにくいと思われるため、いくつか実例をあげてみます。たとえば、わたしの癖はこんなかんじ。

・全部終わりにしたいのにあとぜんぶ忘れて飛び込むには理性が勝ちすぎて 明日のことを気にかけてしまって 結局ちゃんと次の日に響かない時間に帰ってきてしまうような そういう生温くってどうしようもない現実
・相手にしかできないことがある、相手にはそれだけの力がある、と強く信じているひとりと そう言われてもまったくピンとこない、どうして自分にそこまで望みをかけられるんだろう、余程そちらの方がよく出来るだろうにと思っているもうひとり すれ違ったままの期待のはなし
・食事の場面 食べものを口にする、味わう、だけではなくて 別の意味を持たせること

……書いていて少しいたたまれない気持ちになってきました。
ともかく、「好きなもの」はその内容について細かく問わず、設定、関係性、雰囲気、何でもありなことが伝わればうれしいです。


さて、この癖ですが、普段はあまり表に出てくることがありません。自分の中にはずっとあるのですが、誰かに話す機会もそうそうないので……。
しかし、ごくたまに、その癖をごりっごりに詰め込んだものが読みたくなることがあります。自分の癖がたっぷり詰まった、小説、漫画、短歌、などなど。どこかにないかな、と思っても、なかなかそう都合よく見つかるものでもありません。
誰か書いてくれないかな、代わりにその誰かの癖からも(自分がつくるものでよければ)書くから、というきもちが高まりまくったのが、昨年の秋。わたしはこんなことをポストしました。


見るからに私利私欲というかんじですが、ありがたいことに反応してくださる方々に恵まれました。
それならぜひやってみよう、一緒に遊んでください! ということで生まれたのが「癖短歌」です。また、合わせてルールも決めてみました。

・この癖(ヘキ)から短歌を作って!というツイートには #この癖で短歌よろしく をつける
・上記タグのついたツイートから短歌を作ったら、当該ツイートを引用するかたちで発表 + #癖短歌 をつける


とってもかんたん、これだけです。
癖も、癖短歌も、いつでも・どなたでもポストしていただけます。詠む数も1首からOK、もちろん連作を作っていただいても構いません。基本的なルールを守って、いろいろな方が楽しく短歌を詠/読めればと思っています。

最後に、いくつか癖短歌の実例を挙げておきます。(癖はフォロワーさんから、癖短歌はしまによるものです)


その他なにかご不明な点があれば、しま個人のDMもしくはお題箱まで。
odaibako.net

log:202402 短歌

0201
お題:割れたガラス

割れちゃっていいやつばっか残っててきみのグラスはまだここにある
これ以上ないってくらいひどいのを想像しては痛む練習
そこらへんさわんないでねあと少しがちゃってなったまんまにしてて



0206
珍しく大雪の日の短歌(題・写真:月食さん)

もうずっと雪のままなら 動物になれないぼくは家賃を払う
さよならをちゃんと言いたいまばゆくてきらいですきでたまんなかった
完全なものがこわいの性分できみもそのうちいやになるんだ
うつくしいものになりたい祈りって勝率いくらぐらいだろうね




0206
storyteller(物語ベースの相互題詠:お題は遊佐さんより)

たんぽぽの明るい黄色はどこででも軽やかに揺れひどくまぶしい
木蓮 頬にうっすら朝がふる美しいってこういうことだ
教科書に載っていた詩を思い出す貴方の声はひばりのおしやべり
いつだって凭れずにいる隣にはぽつんとひとつ空席がある
繰り返し頭のなかで呼んでいた名字がわたしのくちびるに、いま
朝礼の点呼も絶対かなわない声量だった あなたがわらう
はじめてのおそろいかもってこっそりと言われて撫でる遅延証
8時5分6両4ドア待ち合わせ、の前にささっと直す前髪
ずる休みじゃなくてもっといい名前つけたいねってふたり一緒に
お休みの連絡はせず海に出て(次は終点)ともだちになる




春になったら#04

贖罪にならない こんな こんなのは許されたいって思ってるだけ
そのうちに薄れてくって思ってた誰のもとにも届かないまま
しあわせになってほしいの(ほんとうに?)誰かの声がずっと聞こえる



0213
春になったら#05

俎上には載せないまんまぐらぐらと火をかけたのはいつだったろう
ふつうってどんなだったか先生に言えた人から帰っていいよ
出しっぱのノートみたいに都合よく見ないふりしてたかった、ずっと



0218
自我短歌

春先のやわい匂いは泣く前の気配に似てて好きになれない
人並みに見える(と思い込む)ために週5で着けておくコンタクト
どうすれば怒られないかどうすれば息ができるか考えるくせ
右利きのふりをしながら左手のずっと消えないペンだこを見る
ある程度クラスメイトの反応を参考にして打たれる注射
好きだったライブがいつのことかさえ思い出せなくなっててごめん
うるせえなぶん殴るぞを飲み込んで予測変換恐れ入ります
書きつけたところで何にもなんないよ なんにも わかって打つキーボード



0219
題:夜明け前

まっくらと言うほど暗くない夜の、黒になりきれない空の色
この道を行けば出口がありますと耳打ちをして 嘘、言わないで
しらじらと夜が明けていくとき「僕」の気持ちを答えられてたまるか



題:パン

ひかえめにトングを鳴らすかちかちは僕らにとって拍手の代わり
半分こしたいのぜんぶ選んでよ食べきれないって笑ってくれよ
焼きたてのパンと袋の紙のにおいどっちも好きで抱きしめている



題:ドラゴン(関風ファイティング)

雨降りのアスファルトには路地裏のネオンが映り込んでまぶしい
再見とあなたに指を振ったとき言葉は涙のようにこぼれる
辰年のひとには二度と恋をしない この手で強く抱いてやれない



0220
春になったら#06

両腕でぜんぶ大事に抱えててぼくはじょうずに降りれなかった
吸ってからゆっくりと吐くふたりとも痛いの怖いの飛んでいけって
変わってく毎日にいてあなたにはずっとわかんなくってもいいよ



0222
短詩の風

明日からちょっと旅行に 有給のふりで始まる逃避行(仮)
食べきれないくらいごはんを買い込んでこのまま暮らすだなんて言うな
電源を切ったらきみに渡したい明日いっぱいさらってってよ
えいえんにおわんなければ 頬に降るエンドロールのぼやけた光
ビデオ屋の暗い照明ふたりして変にはしゃいで手なんか繋ぐ
湿気ってるポップコーンをばらまいてフラワーシャワーのふりで笑って
助手席の頭をまるく撫でてみる寝てていいからぐずんないでね
逃避行ごっこはこれでn回目おわりまであと(以下未解答)



0227
春になったら#07

ハイボールメガジョッキでも流せないのって結局あなただからだ
おわりってこんなまぶしく見えるのか やだな 炎が目に痛くてさ
格好よくなれないまんまでも僕はきみが好きだよ だいすきだよ



0228
待合室にて

今の曲好きだったって思い出す それで忘れる いつもそうだな
オルゴールBGMに変えられてさみしいふりをさせられている
サビっぽいとこでもずっと黙ってる今だけきみとわかり合いたい

log:202402 アイドル短歌

0203
関ジャニ∞

考えるよりも早くに動く手であなたの振りをゆっくりなぞる
じゃあまたねここで会おうねきみたちの前ではきっと嘘はつかない
苦笑いするほかなくて黙ってた日にもあなたの曲を聴いてた
永遠は恐らくなくて だけどもし見つかったならきみにあげたい
いとおしい、なんて言ったら笑うかな最後に叫ぶあなたの名前
特別の意味をいまさら きみたちは、最高で、最強の、



0204
SUPER EIGHT

怒ったりめそめそしたり笑ったりあなたといると忙しいんだ
なくなったわけじゃなくって前までの僕たちよりも強くなったよ
きみたちは最高で、最強の、だからなんでも超えていけるさ



題詠ったーより:「星」と「勘違い」

一等星だなんてひどい勘違いさっさと捨ててしあわせになれ


0216
Snow Man 目黒蓮
お誕生日おめでとうございます!

あ におい いまの季節の 電話だとわかんないけど言わせてほしい



0216
LOVE TRIGGER

なにもかも忘れられたらとは言わず正気のままに味わうココア
考えるよりも早くに動く腕 愛されたいってことがすべてで
引鉄にふれる一瞬ガナッシュのやわさが不意に 舌は噛まない



We'll go together

知られずに溢れていった流星と涙はどれだけあったのだろう
春先の雪もかすかに触れた手もきみに出会って永遠になる
忘れたくないと願ったこの日々がいずれ遠のくことを愛した



0220
題:渓流

振り返るとき眼裏にあるものはほんとうよりも多少まばゆい
ひとりきり永遠みたく眺めてたクレーンゲームのやさしいアーム
釣り糸のように記憶をたぐり寄せきみはいつかの渓流にいる



0224
ワンライ:お題「心臓」もしくは「降る」でアイドル短歌

右の手を高く掲げることだって、明るい声をあげるのだって
痛いほど脈打っている全身が生きているって叫ぶ板上
強心臓 こんなに怖いことばっかなのに結局降りれないんだ
心臓の位置をしっかり確かめて右の手で打つ もう違わない
全身を投じることも怖くない、なんてね これは嘘じゃないんだ
3セット揃ったぼくらのCDは心臓よりもはるかに重い
何十年経っても雪が降るときはどっかうれしくなるんだろうね