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短歌と感想ほかまとめ

log:202312 短歌

1202
toconoma「Second Lover」

ぺたんこの靴をかわりに履いていく今夜はどこも痛くならない
生野菜だめなんだっけ(違うっけ)だめだったのはわたしだったね
ここからはさわっていい、ってサンプルはきみじゃないけど多分合ってる



1203
音楽と思った、きみが喋るのを、服がこすれるかすかな揺れを
「指先を動かすの癖?」「え、なんで」「いややっぱいい、そんままでいて」
クロッキー用紙もやわい鉛筆も減りがはやくて お前のせいだ



1205
自己紹介短歌(新)

いつまでも夜ふけに住んであいさつはおやすみなさい一択でいい
ぐしゃぐしゃに崩れてくってわかってて変なとこから取ってくジェンガ
がんばって平気になんなくっていい たぬきのおなかを抱きしめている
石橋は叩いて割ってがらくたのパズルをえいえんえんえんと解く



1208
生産性 日に数十のデコレーションシールを貼ってすぐ剥がせます
怖いものなんかないって言う代わりきらきらさせる硬質ケース
はみ出したシールを鋏で丁寧に落とした、せめて、せめてきれいに
ここからは聞いてなかったことにして眠っちゃうまで光っていてよ



1210
アイロンのいらない服を身にまとうわたしを強く抱きしめてみる


1212
横顔がいちばんきれいに見えるって知っているのは僕の特権
キスしてとねだる角度はこんくらい しょうもないことばかり得意で
尖らせた唇だってかわいいよ、なんて物好きお前だけだろう



1215
方言短歌

あんひとに嫌われとっとにかわいいと思ってしもうたいっちょん好かん
きみからの手紙は箱のきれかとにそっとなおした、青の深かと
すぐ来っけん、ここにおって、て言うとったことばずーっと覚えとっとさ

あのひとのだいっきらいって言い方をかわいいなんてうっかり思う
きみからの手紙はいっとう深い青、きれいな箱の奥へとしまう
待ってて、の言葉に僕は縛られてどこにも行けなくたってよかった

おもっきし大っ嫌いって言ってくるとこすらかわいく思える末期
青い箱、手持ちでいちばんきれいなの、見つけてきみの手紙を入れた
頼んだのそっちでしょうよ当たり前みたいな顔でずっと待ってる





1219
幸福でありますように冷えきったシュトーレンにはうすい切り傷


1222
いちごつみ(先手:遊佐さん)
【1】赤ちゃんが人差し指を握るみたいに甘えてくれてもいいのよ?
【2】キスをする雰囲気すらも掴めないぼくらの恋は依然赤ちゃん(赤ちゃん)
【3】口紅はキスの後にも直すってあの子が言った 踵をあげる(キス)
【4】灰かぶり姫の真似してはしゃいでるきみと遊んで掃除は後で(後)
【5】親指を唇に添え考えるクセを真似てもあの子になれない(真似)
【6】ずいぶんと遠くをのぞむ目をしちゃうクセが好きって言ったら怒る?(クセ)
【7】来世でもまた会ったなら遠くまできたもんだねと笑い合おうよ(遠く)
【8】またねって口にしながらお互いの手を離さないことがあったね(また)
【9】教わったピリカピリララとなえると強くなれるの口紅をひく(口)
【10】指先の真っ赤な糸をそっとひく誰に繋がるかはわかってる(ひく)



1224
方言(福岡)→方言なし

眠れない言い訳だってわかってる あなたのいない布団を撫でる
すっぱ、って笑って剥いたあのときのみかんがいちばんおいしくってさ
ぐしゃぐしゃに撫でられる髪くしゃくしゃな顔した祖父は何も聞かない
届かない・届く さん、はい 何してんの? どうも堅いのしようがないね



1225
方言(遠州弁)→方言なし

しょうがないよねって大人のふりしてる諦めきれないため息の数
やきもちと一緒にきみもお砂糖でまるごとぜんぶ食べちゃおうかな
青痣の滲みてくみたい きみのこと好きってこんな色してたんだ
待ったってどうせ来ないよ、意地悪に聞こえてたならごめんハチ公



1229
お題:ディズニー

京葉線ホームへ続く階段で髪をほどけば変身できる
今はまだおしまいのこと忘れてていいんだよって微笑むねずみ
駅が見える 痛いの痛いの飛んでいけちちんぷいぷい我にかえるな



お題:年越し

たぬきよりきつねがいいって言い張るの多分この人流のじゃれかた
年越しの瞬間いつもの寝間着きて歯みがきしてるきみが好きだよ
民放のテンションまでは上がれないふたりでかわす年始挨拶