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短歌と感想ほかまとめ

log:202210 短歌

1002
いちばんはお互いじゃないところだけぴったり同じで愛しやすいな
別々の個体でぼくらその割にブレスの位置は完璧だった
いつまでもぬるいまんまだ 真っ白な指のいかにも慣れたばいばい


1009
終われたらよかったのにね 白熱灯、向かって右側だけの点滅
ねむれない夜ふけもそんなにやじゃないと言えないぼくはきみになれない
かわり映えしない不幸が並んでるセルをわずかに濃く塗りつぶす


1010 silent 1話
はじめからさよならすればこれ以上傷は増えない 血は流れてる
思いつく限りでいちばん残酷にきみを貫く言葉を選ぶ
使わずにいたのにずっと奥底にしまってたのに(うるさい、なんて)


1014
爪先で揺らす煙草は雨雪のにおいがするって本当ですか。確かめるためにはあなたが遠くって、触れてしまえばとける気もして。灰皿の上で崩れていくものは僅かであっても愛されている。何だって叶うことなどないのならいっそ臓腑を汚したかった。


1015
無造作に咲いてる花とこわいこと何にもしない蜜蜂のそば


1016 10月コミュニティ題詠「食」
何だってあって何にも食べれないフードコートの真ん中にいる
ぐちゃぐちゃになってもきみはかわいいよ部屋でとけてたいちごプリッツ
ぬるま湯を注いだカップラーメンに誰かが似てて残せなかった


1017 silent 2話
本当は違ったことを言うべきで、わかってはいて、だけどごめんね
はにかんだあなたの声は最後まで掻き消されずに残ってほしい
好きな人、いる、と送った そうとしかぼくは言葉を選べなかった


1018 10月コミュニティ題詠「食」
致死量の正しさぬるいポンジュース一杯飲んだ喉のべたつき
味のないお茶漬けを胃に流し込みまだましだって思おうとした
綿菓子を壊さないよう腕に抱く真綿はこんな色をしている


1022 舞台「パラダイス」
生臭いにおいがこびりついている猫を抱いてたおれの腕にも
おそらくは産廃になる人間の腹部が浅く脈打っている
理屈なら誰にもあって継ぎ足したカラスの脚を返しそびれる



1023 silent 3話
きみはそう振り返るって手放しで信じ込んでたぼくがきらいだ
大好きと好きじゃないが混ざってるトーク画面をゆっくりと消す
わかってる、わかってるけど、ぼくの手は結局ぼくを掴んでしまう


1025 題詠ったー:したい
めちゃくちゃにしたい脇へと手を入れて吐く間際までくすぐってたい
いかにもなことをさせたいお互いの指をまどろっこしく絡める
ソファでもシーツの上でもない場所に転がされてる肢体、あるいは

「これは渦だよ」というフレーズから着想して
腕のなかどうしたのって笑ってるきみは知らない これは渦だよ


1029 10月コミュニティ題詠「食」
むずかしい顔でキスしてきた人の風味は恐らくコーヒーヌガー
きみにならお菓子をあげるいたずらもひとつだけなら許してあげる
エリーゼになりたいもしくはロアンヌに肩の力が抜ける相手に

星たべよ、なんてこっそり分けあった秘密はちょっとしけっちゃってた
ヨーロピアンシュガーコーンの先っぽがぐちゃってなってないのをあげる
あとぜんぶ食べちゃっていい もたれてるせいであなたの顔は見れない


1030
蒸気する頬を見ながらチャーシューの歯先でほぐれたやわさを思う
なんだってすぐに食べちゃうこのひとの指には未だふれられてない
煮えたぎるものもすっかり平らげておまえはごちそうさまと笑った