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短歌と感想ほかまとめ

log:202402 短歌

0201
お題:割れたガラス

割れちゃっていいやつばっか残っててきみのグラスはまだここにある
これ以上ないってくらいひどいのを想像しては痛む練習
そこらへんさわんないでねあと少しがちゃってなったまんまにしてて



0206
珍しく大雪の日の短歌(題・写真:月食さん)

もうずっと雪のままなら 動物になれないぼくは家賃を払う
さよならをちゃんと言いたいまばゆくてきらいですきでたまんなかった
完全なものがこわいの性分できみもそのうちいやになるんだ
うつくしいものになりたい祈りって勝率いくらぐらいだろうね




0206
storyteller(物語ベースの相互題詠:お題は遊佐さんより)

たんぽぽの明るい黄色はどこででも軽やかに揺れひどくまぶしい
木蓮 頬にうっすら朝がふる美しいってこういうことだ
教科書に載っていた詩を思い出す貴方の声はひばりのおしやべり
いつだって凭れずにいる隣にはぽつんとひとつ空席がある
繰り返し頭のなかで呼んでいた名字がわたしのくちびるに、いま
朝礼の点呼も絶対かなわない声量だった あなたがわらう
はじめてのおそろいかもってこっそりと言われて撫でる遅延証
8時5分6両4ドア待ち合わせ、の前にささっと直す前髪
ずる休みじゃなくてもっといい名前つけたいねってふたり一緒に
お休みの連絡はせず海に出て(次は終点)ともだちになる




春になったら#04

贖罪にならない こんな こんなのは許されたいって思ってるだけ
そのうちに薄れてくって思ってた誰のもとにも届かないまま
しあわせになってほしいの(ほんとうに?)誰かの声がずっと聞こえる



0213
春になったら#05

俎上には載せないまんまぐらぐらと火をかけたのはいつだったろう
ふつうってどんなだったか先生に言えた人から帰っていいよ
出しっぱのノートみたいに都合よく見ないふりしてたかった、ずっと



0218
自我短歌

春先のやわい匂いは泣く前の気配に似てて好きになれない
人並みに見える(と思い込む)ために週5で着けておくコンタクト
どうすれば怒られないかどうすれば息ができるか考えるくせ
右利きのふりをしながら左手のずっと消えないペンだこを見る
ある程度クラスメイトの反応を参考にして打たれる注射
好きだったライブがいつのことかさえ思い出せなくなっててごめん
うるせえなぶん殴るぞを飲み込んで予測変換恐れ入ります
書きつけたところで何にもなんないよ なんにも わかって打つキーボード



0219
題:夜明け前

まっくらと言うほど暗くない夜の、黒になりきれない空の色
この道を行けば出口がありますと耳打ちをして 嘘、言わないで
しらじらと夜が明けていくとき「僕」の気持ちを答えられてたまるか



題:パン

ひかえめにトングを鳴らすかちかちは僕らにとって拍手の代わり
半分こしたいのぜんぶ選んでよ食べきれないって笑ってくれよ
焼きたてのパンと袋の紙のにおいどっちも好きで抱きしめている



題:ドラゴン(関風ファイティング)

雨降りのアスファルトには路地裏のネオンが映り込んでまぶしい
再見とあなたに指を振ったとき言葉は涙のようにこぼれる
辰年のひとには二度と恋をしない この手で強く抱いてやれない



0220
春になったら#06

両腕でぜんぶ大事に抱えててぼくはじょうずに降りれなかった
吸ってからゆっくりと吐くふたりとも痛いの怖いの飛んでいけって
変わってく毎日にいてあなたにはずっとわかんなくってもいいよ



0222
短詩の風

明日からちょっと旅行に 有給のふりで始まる逃避行(仮)
食べきれないくらいごはんを買い込んでこのまま暮らすだなんて言うな
電源を切ったらきみに渡したい明日いっぱいさらってってよ
えいえんにおわんなければ 頬に降るエンドロールのぼやけた光
ビデオ屋の暗い照明ふたりして変にはしゃいで手なんか繋ぐ
湿気ってるポップコーンをばらまいてフラワーシャワーのふりで笑って
助手席の頭をまるく撫でてみる寝てていいからぐずんないでね
逃避行ごっこはこれでn回目おわりまであと(以下未解答)



0227
春になったら#07

ハイボールメガジョッキでも流せないのって結局あなただからだ
おわりってこんなまぶしく見えるのか やだな 炎が目に痛くてさ
格好よくなれないまんまでも僕はきみが好きだよ だいすきだよ



0228
待合室にて

今の曲好きだったって思い出す それで忘れる いつもそうだな
オルゴールBGMに変えられてさみしいふりをさせられている
サビっぽいとこでもずっと黙ってる今だけきみとわかり合いたい