0301
短歌桜
空中の埃も舞った花びらも光を受ける 忘れられずに
0301
ふっつりと落とす電源 ひとのことすすんで嫌いになんなくていい
ぼくだけがずっとみにくいままだったフロントガラスにゆうべの雨が
びりびりに破って散らすとき一等きれいだったねそれじゃあまたね
0302
指先をいまだに鳴らせないぼくは到底消えることもできない
この風の中を突っ切るめちゃくちゃに壊れてくならそれもいいだろう
さようなら花粉ばいばい全身をはたいて落とすあーあって声
0304
ちょっとだけ息がしにくい原因を背負わされたって咲く沈丁花
3センチ顎をあげれば道端に梅の白さはあふれ出ていた
たんぽぽを摘んできた子は春だって怖くないよと教えてくれる
0306
題:恋
その人を呼んでるきみの横顔がいちばん好きでかなわなかった
0307
満月とおんなじくらいぴかぴかのきみが夜道で手を振っている
月すごい、とだけ送ってきた人は好きなら好きってそのまんま言う
お月さま丸くておいしそうだった 捕まえてきてきみにあげたい
0308
まだかなあ、の顔してるのを見たくって通行人のふりをしていた
ミモザ降る道を歩いてきたんだろう指先でとくきみの癖っ毛
0311
絶対に好きな味したパンケーキあなたはそばにいなかったのに
何気なく振った右手に駆け寄ってハイタッチするきみのさよなら
信号が変わってくのを見送ってあともうちょっと一緒にいよう
0318
題:花粉症/泣いたのを花粉症とごまかす/友達
一面が黄色く染まる映像を遮るように変えたチャンネル
両方の目を取り出して洗うより泣いちゃうほうがコスパよくって
よく晴れた外から帰ってきた僕は毒かもだけど隣に座る
0319
題:友達みたいな先輩後輩
よそゆきで勝手に呼んで頬っぺたも耳も真っ赤にすんのやめろよ
切り替える速さえぐいね なんですか 敬語もちゃんと使えるんだね
誕生日来なきゃいいのに同い年のまま一緒に過ごせてんのに
0322
題:ドリップコーヒー/インスタントコーヒー
それなりに愛されるのには慣れているインスタントの薄いコーヒー
差し出した缶コーヒーはそのままにこっちがいいと抱きしめられる
コーヒーの一滴目ばかりあげたいと思ったのってはじめてだった
0323
カロリーは何も裏切らなくて好き
賞味期限なくて捨てられないアイス
からっぽな僕をポテチで膨らます
0326
題:低気圧
くたびれた毛布もいつか捨てられて大事にできるものは少ない
あとは散るだけの花びらだったろう 何で泣くのかわかんなかった
降りそうで降らないときのぬるい風そうだね全部おれのせいだね
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付句:何度目の春なんだろう
何度目の春なんだろう行かれない吹き溜まりには万の花びら
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ぐずってるうちに空気はぬるまってこんなに空っぽだったっけ、春
悩んでる人でもページの最後には救われてくのうんざりだった
泣きたくて泣いたんじゃなくただ少し雨のにおいをかいだだけです