20200802
引き延ばしたかった それじゃ、と言いおいてzoomが切られるまでの数秒
不揃いな言葉をいっそ手離してしまえば楽になるはずだった
ぽっかりと浮かぶ通知をたしかめて眠った夜のぬるい体温
だいじょうぶ、の言葉を口に出してみる だいじょうぶ、まだ、やめないでいる
Hey Guys ゆるくほどけるひらがなのやわさが今も耳に残って
20200806
エレベーターホールを抜けてまっすぐに出てったきみはずっと明るい
体温とおんなじ風にふれられてつめたい肌が息吹き返す
信号が赤から青になるまでの間に真昼の月を見つける
20200807
カントリーマアム短歌
思ってたよりも小さくなってない、どうだろ、食べて確かめてみて
大昔持ってた毛布の色だからバニラのカントリーマアムが好きだ
答えってなくてよかったご当地の味ならどれがいいかでもめる
ごくたまに甘くてしばらくむせている泣いてしまっていいよと思う
この味も食べると聞かれてうなずけば不器用な手がぼろぼろと割る
20200816
八月のさみしさすべて注がれて白く染まった木槿かがやく
あと何日、と数えるほうが早くなる気だるい朝の話をしたい
遠いあの音は花火か雷鳴か答え合わせの前に眠った
20200818
下句へ付句したもの
ちがうよ、と答えることにも飽きたから付き合っていることにしようよ
ほんとうにしてはくれないひとの言う付き合っていることにしようよ
だまされてみたくて君の手をとった付き合っていることにしようよ
うそだよ、と言いたくなくてあと少し付き合っていることにしようよ
20200822
むき出しの足を撫でられ立ち止まるバス通りからはみ出す雑草
大きめの麦わら帽子から透ける細かい影が頬に落ちてた
あついのにあついの食べるの好きだねと言いつつ並ぶ中華料理屋
20200823
ファミチキとビールが確かな答えだと知っているなら生きていけます
パーティーをしようありったけローソンのロールケーキを買って帰ろう
20200825
クレヨンで白く落書きした上に青の絵の具でなぞった空だ
街灯がゆっくりと点く早めにのぼった月かと思う
力なくあああ、あーあ、と嘆いてる蝉は明朝ここにはいない
20200827
まっさらな顔したきみとすれ違う片手を上げてこたえたかった
盛り上がる前のシーンにあったっけ 音のないまま日が暮れてゆく
ほんとにはもっときれいであざやかでつくりものだと言うなら信じた
20200828
下句へ付句したもの
不揃いな言葉を握りしめている私がそうでとても苦しい
20200830
上句へ付句したもの
絶望の575を77で救え!
https://chocottobun.wixsite.com/kameweb/57577
落ちていく卵が割れる5秒前ハンプティダンプティの名を思い出す
バスの中有名人と間違われひみつにしてねとおどけてみせる
告白のLINEを親に誤送信した話する?元気出るから
バリカタがやってきた時鳴る電話叩き切ったら卵サービス
捨てられて仕事も彼も何も無いすがすがしさにビールをあける
チューペットの青さに雲も染まってる、ってきみから届く真昼の写真