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短歌と感想ほかまとめ

log:201906 短歌

許せないことが増えてくきらきらと輝くものを愛せなくって

人型を取れないままに家を出てだらだら歩くはねられるまで

キーを打つ指の冷たさWordは白く途絶えて干からびていく

(星砂のようだね)打っては消して、点滅、まぶたに焼きついている

まるで住む世界の違うアイドルのたった一語に救われもする

名も顔も知らないひとの笑い立つざわめき遠く聞きつつ眠る

帰りたい場所などなくてのろのろと歩きつつ見るうすい三日月

ぺらぺらと思いも知らぬ言葉吐く酒類に濡れた自分の舌で

もうずっと白く濁ったまま沈むほどけて溶けるふやけたシーツ

もうなにもしたくはないしもうなにも苦しみたくはなくておやすみ

何だって怖くはない、と言う代わり水溜まりでもざぶざぶ歩く

煮こごりのぬるみ中身はわからずに不格好でも生きてはいける

踏み付けてこなごな光る雨粒を拾いはしない駆け抜けてゆく

ケーキの詰まった紙箱を抱えて帰る何てことない木曜

箱庭の愛しさいつか終わるって知ってて鍵をかけてごめんね

真昼間の熱がこもるコンクリを 蹴飛ばし急ぐ花火は向こう

明日とか十年後とか知らなくて それでも食べるし眠るし笑う

眠れずにいたっていいよ目を閉じてまぶたの裏に絵を描き遊ぶ

線香のにおいが胸に下りてくる 夕暮れ、だれかが生きて死ぬこと

この先の角を曲がって正面の駐車場から見ようよ、花火

もうやめろ、みっともないと言われてもけして手離せないもののこと

頭まで埋もれて機能する生命維持装置としてのふわふわ

文字なんてなくても多分生きられるけれど、それでも、やっぱり、(苦しい)

うっすらと死を待つ袋たぷたぷと充ち満ちて今、溢れる、あふれる

いつか見たプラネタリウムの紺と銀 きみの瞳が汚せなくって

街ビルの光にだってきらきらと照らされる瞳、きみのまばゆい

奥底でくすぶっている爆弾を捨てられもせず抱きしめている

まるで海みたいだ こんな陳腐さでごめんね、 きみの瞳は清い

重力を感じるきみの瞳からぱたりと落ちた雫の軌道