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短歌と感想ほかまとめ

短歌

log:202209 短歌

0903 ワンドロ「一」または自由詠 降りますとただそれだけが言えなくて閉まってしまうドアの正面 あ、泣く、と思ったあとに喉と目の奥で火花が爆ぜる一瞬 一番線ホームにうずくまっている 逃げ出せるならそうしたかった 0909 9月コミュニティ題詠「文房具」 …

log:202208 短歌

0801 あの人にもらった傷をなぞってく消えちゃう前にもいちど深く 心臓につながることを話しつつ薬指へとすべらすナイフ 今まででいちばんきれいに巻きつけた絆創膏にきみはふれない ・ 憎んでるわけじゃないけどちょっとだけ不幸せならいいと思った。ちょっ…

log:202207 短歌

0707 息を吸うキスはしたことないと言う誰かを惑わす手段はわかる ・ くるまった真綿は君のかぶってたベールと同じかいっそう白い 0708 誠実とまさか自分じゃ言えないがせいぜい爪は短く保つ 0709 唇にふれてもきみの体温はぼくより低く保たれている 0710 嘘…

log:202206 短歌

‪0601‬ 相互題詠:沈む 沈まずにいてよ太陽あの人の影とこっそり手をつないでる 沈みたい? 尋ねるずるさを愛してた答えはとうに知ってるくせに 沈むなら一緒がいいねどう見てもふたりのせいとわかりやすくて 沈めても華奢な体は なくていい来世は風呂場の黄…

log:202205 短歌

0504 コミュニティ5月題詠:嘘 痛いとこなんかないって微笑んであなたはやさしい嘘ばかりつく 正しさで出来てるきみに抱かれたいこれも嘘っていうことにして ほんとうはいたかったって聞いてみる そうかもねって嘘つきは言う 0505 好きなひと呼ぶと案外生き…

2022年 個人発行物ログ

2022年に発行したネットプリントなどのまとめ。記録としてPDF版を公開します。 発表時期の新しいものが上部にきています。 ・・・・・ 20221010 ネットプリント「ふたりぼっちの王国」 2022年9〜10月に作っていた「ふたり」についての短歌をまとめ、新しく作…

log:202204 短歌

0402 ADAM at ライブ 日の光 地上に地獄があったって浮き立つ今も嘘じゃなくって この春を残さず食べるカクテルに沈む桜の味を覚える 駅までをライブアレンジなぞりつつ好きのかたちを無数に増やす 0412 いつまでも泣いていようね傷んでるいちごを大きな鍋で…

log:202203 短歌

0301 短歌桜(3首目のみ新) さみしいとおなかがへったを間違えてぬるいごはんを食べながら泣く くたびれた腕で支えた花束へLEDの真白いひかり 欄干を飛び越えるにはあまりにも日向に置いた右手がぬくい 0313 泣きたくて泣いてるわけじゃないときのわたしは…

log:202202 短歌

0203 あるはずのないセンターに駆け込んで足りない夜をやり過ごしたい 遅れてた手紙が届くおもてうら撫でてみてから大事にひらく 無造作に渡してくれた小包があんまりあったかくって困った 0204 街灯は正しくともる 手のなかの、自分のものにはできないこと…

log:202201 短歌

0112 写真だとよさが伝わらないことはわかってたけど一応撮った 大切にするやりかたをひと通り聞いてまともなふりをしてみる ・ 脳直で喋ってたって流しててくれるおかげで息ができてる あたりまえだって顔して来年もおんなじ坂をくだりたかった 0114 接続を…

2021年 短歌・アイドル短歌振り返り

#自選10短歌集2021に参加しました。 自分の作ったものを読み返す、とてもいい機会になりました。 また、いろいろなかたの作品にもふれることが出来て、普段なかなか幅広く読めないでいる人間としては、本当にありがたいなあと思っています。 以下、簡単では…

log:202112 短歌

‪1206 またねって手を振りながらもう話すことはないって思ってしまう 吸い込んだ息が冷たい 泣いたのは反射であって感傷でない ごめんねと打ちかけて消すあなたにはもっと上手に会えばよかった 1214 昔いた小さな町を愛称で呼んでも通じる人を好いてた ・ ぼ…

2021年 個人発行物ログ

2021年に発行したネットプリントなどのまとめ。記録としてPDF版を公開します。 合同で発行したものは除き、個人で発行したものに限って掲載しています。 ・・・・・ 20210221 第1回オンライン短歌市 ZINE/ネットプリント「scrap 2018-2021」 2018年から2021…

log:202111 短歌

1115 初句:泣かないで 泣かないで やさしくなんて聞こえない声しか掛けられなくてごめんね ・ このひとの許せなかったところさえすぐには思い出せなくなった 傷ついてやることはない さかむけを清潔な手で静かにさわる わかってたなんてつぶやくはじめから…

10首連作「フォーカス」

半券を千切れずにいるチケットをなくさないようそっとしまった うっすらと曇りつづける春先の空にまぎれて消えた花びら ほんとならあなたへ振れた手のひらの行き場がなくてしずかに下ろす つっかえた喉の奥ではいくつもの言葉が息を引き取っている かみさま…

log:202110 短歌

1012 母音が全部aの短歌 あなたなら探さなかった鮮やかな傘ははなから刺さったままだ 墓は空あなたはばかだ硬かった体は彼方たまらなかった バーターは泣かなかったが花束はまさか触らなかった ばかだな わがままなあなたが泣かなかったから真赤な薔薇は枯ら…

log:202109 短歌

0905 消えちゃったほうがいいほど不幸だと信じたいのに鳴ってるおなか 自分から漏れる嗚咽の音程がわざとらしくて許せなくなる ハイターにつけるわたしも水筒もちょっとはましと信じたかった 0910 ぬるまったビールがジョッキを満たしてる飲みきるまでは一緒…

log:202108 短歌

0801 やめちゃえよ 取り繕った言葉など後生大事に抱えておくな 新しく白いページをめくるたび幾百の字が礫にかわる ほんとうに何にも持ってないひとはそうと知られぬようにほがらか 0804 頭から浴びせかけてよ不凍剤もはや安寧などはいらない 0813 十把一絡…

log:202107 短歌

0701 お題:透明と不透明 ほの白い求肥のなかの自意識をそうとは知らず潰してしまう 万年の雪を見ている水底で繰り返されるぬるい幸福 いつまでもうずくまってろ 渦中にはいない自分を呪ったらいい 0717 頭から丸呑みにしたかなしみは小骨を多くからだに含む…

log:202106 短歌

0603 大丈夫、に答える声が出来るだけ震えてなければいいなとおもう 熱を持つまぶたの上に手を置いた 光を見るにも体力がいる 宝箱ひらいて見せるときみたくあなたを好きなままにありたい 0606 お題:お山の大将 勘違いさせる時間はより長くのたうち回るおま…

log:202105 短歌

0508 夏は死に近い② 昼間からカーテンを引くふたりには蛍光灯の白さえこわい ふれないで触れさせないで願ってもただれていったやわらかい皮膚 知らんぷりしてるおまえは手を引いて赤に変わった信号を行く 0514 息を吸い込んで朝まで降っていた雨の気配を体に…

log:202104 短歌

0403 あいものを取り出す箱の深くから終わってしまった季節のにおい 観客のいない舞台を照らすようホームにまるく日向ができる ウォークマンに入れっぱなしの歌を聴く覚えてたより掠れてる声 0404 評定を避けても楽にはなれないととうにお前は知っているだろ…

202104 忘れたくない

定時すぎ幕は上がっていることを思い描いて背筋を伸ばす そこにいるひとの鼓動が聞こえるか、ゆらめく熱は肌に届くか 春先の息がしにくい現象に名前をつけてくれりゃよかった 掃いて捨てられるものだと知っていて拾い集める花びらがある 泣き声を溢さないよ…

log:202103 短歌

0301 いちばんになるのはとっくに諦めて梅はひとりでつぼみを開く 根本からぼたぼた落ちる木蓮のすぐに失くしてしまう潔白 ちょっとだけ泣きたくなって目をつむる道に香っている沈丁花 0302 恐れ入りますがあなたはきらいです下記詳細をご覧ください マニキ…

202103 正しい黄色

恐れ入りますがあなたはきらいです下記詳細をご覧ください さみしさはあまいかそれとも海に似て塩からいのか教えておくれ 間違ってばかりのぼくに降り落ちるミモザのいかにも正しい黄色 スクラップ工場に行く粉々になれば少しは輝けますか 忘れてもいいこと…

log:202102 短歌

0201 取り次ぎをお願いしますお相手のことはあいにく覚えてません 「ワクさんに折り返しTEL」正しくはワクワクさんですという訂正 ・ おおあくびしてたねぱちんと目が合って照れくさそうに首をすくめる ちいさいとはじめて気付くおそろいのマスクの幅が余る…

202101-02 ある銀河

生きるのが下手だね人とまたねって別れたあとの反芻のくせ 霜焼けになるぎりぎりの爪先で確かめている銀河の温度 おやすみとやさしく花粉を拭われたカサブランカの清潔な白 ちょっとだけ乱視が入った目で見てるそのまま写すレンズがほしい 息の根を止める手…

log:202101 短歌

1231-0103 滅んでる町に残ったスーパーで正月用のいちごを買った 暗がりの先に突然現れた郊外型のファミマでセーブ 残された時間は見ないふりをして頭痛薬だけ飲んでおやすみ 生きるのが下手だね人とまたねって別れたあとの反芻のくせ 0104 スタバには噛まず…

log:202012 短歌

20201222 昼すぎであっても淡くくすんでる日向をわざとゆっくり歩く どん底と言うならここだ折り返し地点で深く息を吸い込む 傷ついた柚子には柚子の生きかたがあって今夜は湯船に浮かぶ

log:202011 短歌

20201102 低空飛行 なにひとつうまくならない早起きもこんにちはって一言すらも しゃくり上げながらここからどうやって泣きやむべきか考えている なんだって平気な人だと思ってた に笑ってみせちゃうからか、敗因 乏しさを照らされるのがこわくってまぶしい…