20201010
透きとおる冬のつめたい外殻に明るいひかりの色が隠れる
食べ終わることが惜しくていつまでも手のひらにあるかもめの玉子
鍵盤を跳ねてく指のまばゆさはまあるい菓子の白さと同じ
20201011
鳥
柵の中囲われている人間をハシビロコウはじっと見つめる
したたかに生き抜くのってむずかしいゴミ捨て場にいるカラスと出会う
怖くないものと信じた自動車に撥ねられている近所の土鳩
20201015
好きじゃないひととペアを組まされてキュービィロップはときどき不幸
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一日に一粒食べて金曜はいちばん好きな味を決めよう
ちょっとだけ泣きそうだから取り急ぎマスクのなかに放り込んどく
今日もよくがんばりました回らない舌でゆっくり舐めて駅まで
20201017
十二月並みの気温であるという正しい寒さを思い出せない
数センチ開いた窓から流れ込むどこの誰とも知らぬ演説
かわいいとはしゃいだ人が指す先にぶら下がってるドライフラワー
日に焼けたページに影が落ちかかり薄ぼんやりと染みを作った
吐き出した息が冷たい不織布は他人行儀なままに膨らむ