scrap

短歌と感想ほかまとめ

アイドル短歌アンソロのこと(振り返り)

短歌アンソロジー「アイドルが好き」について。

アイドル短歌アンソロWEB版はこちらから↓


以前書いたテーマ短歌への感想はこちらの記事から↓


上記記事でも軽くふれたのですが、わたしはこちらのアンソロに
・テーマ短歌「アイドル」への投稿
・エッセイ寄稿
・アンケート回答
以上3項目で参加しました。
今回は、このうちアンケート回答以外の項目について書いてみたいと思います。


寄稿したエッセイ「幾億のまばたき ーシャッターを切ること、短歌を詠むこと」


エッセイ寄稿についてお話をいただいたとき、テーマとして提案があったのは「シャッターを切るように」でした。目に映ったものを短歌として表すことと写真をとることに、わたしの中で似通った点があれば、という。
このテーマから考えた内容は、エッセイにすべて書いたつもりなので、ここでは投稿した短歌との関係についてふれることにします。

エッセイをどんな内容にするか、具体的に考え始めたのは比較的早く、7月中から内容を整理していました。短歌をつくること/写真を撮ることについて、思い浮かんだことを書き出していって、重なり合う部分を見つけていく。
これは割とすぐに作業が終わって、自分の中でキーになっているものを掴むことが出来ました。その後、どう書き出してどうまとめるか、よりイメージを膨らませるために、少し時間を置くことに。

テーマ短歌「アイドル」についても、早くから考え出してはいたのですが、どういった切り口でつくるかまとまらず、かなり難航していました。
そもそも既発表の短歌を投稿するか、新しくつくるかも悩んでいました。ちなみに、既発表の短歌にする場合には、2020年に作った「祝福がありますように希望とか愛とかぜんぶくれるあなたへ」がいいかな…と思っていました。アイドルへ向ける感情として、これがいちばん根っこにある気がするので。
ただ、やはり折角の機会なので、新しい短歌を作りたい、という気持ちが強く、練り始めたのは8月後半。
この時期、ノートに書いて整理する・短歌をつくることを試していたので、「アイドル」の短歌についても同じようにしました。思いついたまま、ぱっと書き出したのは「ペンライト」「手の中にあるあかり」。

今までに何回も、東京ドームで、横浜アリーナで、その他いくつもの会場で見てきた、好きなひとの姿。そこに立っていたときの、うれしくて、楽しくて、でもどこか喉がつまって泣きたくなるような感覚や、ペンライトを胸元に抱いていたときの、切ないような感情。わたしにとって、アイドルの存在を強く感じるのは、やっぱりいちばんはコンサート会場にいるときなんだなあ、と改めて思います。
ただ、その一瞬は、いつか変わって、終わってしまう。どうしたって、忘れてしまうときは来る。それでもあのとき、コンサート会場でアイドルの姿を見たとき、光だと思っていたことは、好きでいたことは恥じたくない。間違いだったとは思わない。
そこまで考えて、ペンを走らせているうち、ふっと、「いつか遠景になっても」という言葉が浮かんできました。遠景。

ところで、わたしは何だか鈍くさく、間の悪いところがあって、コンサートに行ってもなかなか、自担をうまく見ることが出来ません(トロッコがこちらに来る!と思っていたら、本当にすぐ直前でくるっと反対を向かれるとか、よくあります)。
今でも忘れられないのは、関ジャニ∞のコンサート。ずっと丸山さんを見ていたのですが、丸山さんはまったく違う方を向かれていて、全然こちらには視線も来なかった。それでも、わたしがほんの一瞬うつむいたときに、ぱっとこちらを向いたのだそうです。隣にいた友人はそれに気付いて、今!今だよ!と思ったそうですが、あいにくわたしはまったく分かっていませんでした……。
ただ、このとき印象に残ったのは、友人が言ってくれた「まるちゃん、こっちをはっきり見てたよ」という言葉でした。わたしは、こちらに目をやる丸山さんの姿を見られなかったけれど、丸山さんの目には、丸山さんのうちわを持っているわたしが(おそらくは)映っていた。それなら、自分の間の悪さに腹は立つものの、ここに丸山担がいるよ、と少しでも示せてよかったかもしれない、と感じられた。

わたしが見たアイドルの姿は、いつか遠景になる。そうしてまた、アイドルが見たわたしや他のファンの姿も同じように、彼らにとっての遠景となるだろう。あのコンサート会場で、おそらくは丸山さんの見ただろう、ひとりの丸山担の姿も。
そしてそれが、その遠景が、明るいものとして残るならいい、とも思った。ひとつひとつのペンライトに、それぞれ明かりが、アイドルひとりずつの色を示す光が灯っているところが、いつか思い出せるなら。
そんなことを想像し、願って、そうしたら、あれだけ悩んでいたテーマ短歌「アイドル」を、するっと作ることができました。

 手の中に抱いてたあかり遠景になってもきみの眼裏にあれ

完成した短歌を投稿してから、ようやっとエッセイを書き始めました。8月も後半。とはいえ、内容は早くに決まっていたことと、テーマ短歌「アイドル」が出来たことで、そこまで詰まることもなく書き上げられたと思います。
エッセイで引いた自作短歌は2首。内容に合うものを、と選びましたが、そのうちの1首「ぼくら立つ場所には絶え間ないひかり とびきりのよいものになりたい」は、「手の中に〜」ともリンクするかな、と思っています。
また、エッセイでふれた、薄れていくもの・覚えておきたいと願うこと・残しておくためのかたち、という内容そのものも、「手の中に〜」の短歌と響き合うものになればいいと感じています。


何かあればお気軽にどうぞ!