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短歌と感想ほかまとめ

2022年 短歌・アイドル短歌振り返り

#自選10短歌集2022に参加しました。





2021年に引き続き参加できてよかったです。作ることは継続して出来ていますが、振り返る機会はなかなかないので。
文字色とフォントはどちらもお任せにしました。前回もお任せにして、とても嬉しく楽しかったため。
前回とは少し違った色味になっていて、それも面白かったです。鷹野さん、本当にありがとうございました。

こちらの企画では、いろいろな作品を一度に見られるのも刺激になります。参加されている方が多く、今時点でかなり圧倒されていますが、ゆっくり読んでいきたいなあと思っています。無理ないペースでいきたい。

下記、ひとまず自選の振り返りをかんたんに。
該当の短歌を含む画像か、画像がないものは初出時のツイートURLもあわせて載せておきます。
1つの題・テーマにつき、3首セットで発表していることも多いため、同じときに作っていた短歌もわかるようにしました。(1/25追記)



全般


まず、2022年に作った数は、短歌308/アイドル短歌298(参考:2021年は短歌319/アイドル短歌159)。数でみると、年間トータルですごくバランスがよかった。
この中から短歌3首、アイドル短歌7首を選んで提出しています。このあたりのバランスはあまり意識していないというか、結果こうなった、くらいです。また、2021年が半々くらいのバランスにしたので、それとは変えてみようかな? というのも少し。
今後もし参加できる機会があれば、全部短歌/全部アイドル短歌、になる自選もやってみたいなと思っています。

今回かなり自選に悩み、最終的には記録を見返さなくてもある程度覚えているもの、シンプルに好きなものを中心にして構成しました。
2022年は個人ネプリ発行が2回、企画参加の機会も複数回ありました。好きな短歌、という括りでいうと、その際に作った短歌でいくつもあったのですが、あえて今回の自選からは抜かしています。

作業している時点では、ネプリ発行分や企画として連作の形にしたものは、それにかかる思い入れが深いこともあり、10首の中でそこだけ浮かび上がるような気がしたので、自選には含めない、と思っていました。
ただ、あとから見たときに、そういうものを入れたらさらに幅があってよかったのかな? とも感じ……このあたりは好みというか、まとめる方向性だとは思うのですが、今時点で少し、こうする案もあったな、と感じているところです。

自選の並びは基本的に時系列としています。ただ、10首目だけは、1首目と対になるように置きたかったため、変則的にこの位置としました。
1首目と10首目、どちらもアイドル短歌であり、主題としている人も同じですが、その人が見るもの/その人を見ること、として対になっています。


振り返り

01. 頬に降る雪の重みを受けながらステージで見た光を思う


・2022年1月
・アイドル短歌/Snow Man 深澤辰哉さん(J31Gate 第23回「雪」提出作)
・アイドル短歌の中では特に印象深く覚えていたものなので、自選に入れることはかなり早くから決めていた。また、前回「2021自選10短歌集」に参加した際の1首目も深澤さんに関するアイドル短歌だったため、今回も同じようにしようと思っていた。結果1首目にこちらを置いている。
・テーマ「雪」だったのでどうにか出したいと思ったものの、本当にぎりぎりまでまとまらず焦った記憶がある。ただ、どうにかこうにか考えた結果、深澤さんらしさ、というか、こういう風に描きたい、がきちんと言葉にできた気がして好きな短歌。

(元)
手を伸ばす先はじめての雪が舞う夜明けのしじま響く心音
頬に降る雪の重みを受けながらステージで見た光を思う




02. 街灯は正しくともる 手のなかの、自分のものにはできないことば


・2022年2月
・会社帰りにコンビニであるネットプリントを出力し、信号待ちの間に貪るように読んだ。こうは作れないと思ったし、自分の作るものがとても頼りなく感じた。そのときのことを元に作ったもの。
・何かを作ることを大切に思っているけれど、同時にうまいこと折り合いがつけられず、度々もうすべてやめようかと考える。それでもやめられずにここまで来て、さらには結局またこうして作るのか、と思いもする。
・1年を通してこの短歌のことはよく思い返した。言葉のことはわりとずっと考えている。うまいことできなくても、嫌になっても、なんだかんだ投げ出さずに続けてきたなあ、と思いつつ自選に入れた。

(元)
街灯は正しくともる 手のなかの、自分のものにはできないことば
階段や横断歩道を行きながらふいに零れるチヨコレイ
全身に纏いつかせて、気付かないふりしてたかったなんていまさら




03. かみさまは電車にも乗る今ここでおんなじように生きる東京


・2022年3月
・アイドル短歌(題:信仰)
・神さまという概念を創作の中でよく使ってしまう。また、電車やバスといった公共交通機関が出てくるものも好き。
・アイドルの皆さんは普段車やタクシーでの移動が多いと思うが(特に都内)、たまに都内を走る電車にも乗ることがあるらしく、そういう話にふれると何だかうれしくなる。同じように生きて生活している人なんだなあ、なんて、そんなの当たり前だろうと思えばひどく残酷なことかもしれないけれど。

(元)
かみさまは電車にも乗る今ここでおんなじように生きる東京
もう楽になってください かみさまがかみさまじゃなくなった春の日
信じても救いはないと知っている声も立てずに泣いたかみさま



04. 棘のある花にさわった手のひらに傷が増えても構わなかった


・2022年3月
・アイドル短歌/Snow Man 深澤辰哉さん(週刊朝日4/1号)
・このときの巻頭グラビアとインタビューがとても好きだったので、どうにか短歌の形にしたかった。薔薇の花を持っている写真から着想したため「棘のある花」。
・深澤さん、周りをよく見ていて、人の痛みには敏感だと思うのだけど、反対に自分のことになると無頓着というか、ある程度なら自分を犠牲にしてもいいと思っていそうだな、と感じることがある。犠牲になっているとも思っていないのかも。そういう部分を詠みたかった。

(元)
やさしさにかたちがあれば深々と降らすあなたを眺めて過ごす
棘のある花にさわった手のひらに傷が増えても構わなかった
くせのない声も遠くを見てた目も消えちゃいそうで忘れられない



05. こんなにも日向があふれている午後にふたりぐみってことばがこわい


・2022年4月
・いただいたお題「焦燥感」から
・学生時代によくある「二人組を作って」というシチュエーションを考えながら作ったもの。体育のとき、英会話、ディスカッション。別に怖がるようなものでもないのだろうけど、あんまり得意じゃなかったなあ、という短歌。
・作ったときも今も結構情けないなあという気はしていて、でもここまで飾らずにすとんと言葉にできたのはよかったな、と思っているので、自選の中に含めることにした。

(元)
こんなにも日向があふれている午後にふたりぐみってことばがこわい
振り向くと誰もいません 遠くから聞こえる声は高く弾んで
夢だって思ったところで醒めなくてえんえん自分を繰り返してく




06. 目のふちに触れるとわずかに濡れている かなしいことはないよ、なんにも


・2022年4月
・アイドル短歌/Snow Man 深澤辰哉さん(BARFOUT! vol.319)
・04と同じく、掲載された写真とインタビュー内容が本当に好きで、そこから作ったもの。これは深澤さんの目のふちに涙が引っかかって、でもそれを拭うでもなくいるときのカット。
・深澤さん、やわらかくやさしいのは本当なのだけど、どこかずっと掴みきれない人だなと思っている。そういう人の中にある感情の揺らぎ、でもやっぱりすり抜けていくかんじ、を書きたかった。
・かなしみ、痛み、というものもよく書く。特に深澤さん絡みのアイドル短歌を作るとき、結構結びつけているかも。

(元)
ここにいるぼくじゃなければ春草のにおいを嗅ぎもしなかったろう
深くまで手を差し入れて心臓の(または痛みの)位置を覚える
目のふちに触れるとわずかに濡れている かなしいことはないよ、なんにも



07. この人はおれが好きって信じてもいいらしくってやけにまぶしい


・2022年8月
・アイドル短歌(アイドル短歌25のお題:1「担当」または「推し」)
・アイドル短歌25のお題、とっても楽しかった! 特定の方に関するものではなく「あるアイドルの話」として作ったはじまりの1首。人物像や方向性をぴたっと示せたように思って気に入っている。
・アイドル、特にJr.など舞台に上がり始めて間もない人が、自分に向けたうちわを持っている人を見た、ときのイメージだった。どんな気持ちになるのか、わたしには想像しきれないけど、おそらく強く焼きついて離れないんじゃないかな、と思っている。

(元)
25首のまとめ記事↓




08. シュレッダーもうちょい大きいならいいね 粉々になるものはきれいで


・2022年9月
・たまにこういう、どうにもならんなみたいな短歌を作ってしまう。大体は本当にどうにもならないで終わるのだけど、まれにわりと自分の気持ちに添えたな、と思えるものができることがあって、これはそのパターンだった。
・シュレッダーとか、穴あけパンチとか、文具・事務用品が作り出すものって、意味はほとんどないけど、その無機質なかんじは結構好き。
・わりと平淡な話し言葉を入れ込むの好きだな、とこれを見返していて思った。

(元)
スーパーの床でごねても許されるタイプとそれを見ているタイプ
言わなくてよかったことにまみれてる体の汗とは違ったにおい
シュレッダーもうちょい大きいならいいね 粉々になるものはきれいで




09. 月もまたどうか照らしてくれるなと思うだろうか 掛け布をとる


・2022年11月
・アイドル短歌/関ジャニ∞ 丸山隆平さん(お誕生日にあてて)
・丸山さんのメンバーカラーはオレンジ。いつでも陽気で楽しいマルちゃん、といったイメージはかなり浸透していると思う。ただ、丸山さん自身にも(当然のことではあるが)気持ちの浮き沈みはあるし、いつでも燦々とまぶしくあれるわけでもない。メンタル面で月の満ち欠けや気候の影響を受けることがある、といった内容は丸山さんのブログにも出てくる。
・そういった、太陽や明るい光のような彼へのパブリックイメージと、それでもどうしたって揺れるきもちの部分、また、彼自身の感受性の豊かさ、人へのやさしさ、などを少しでも表せたら、と思っていた。太陽は月を照らすけど、月がそれを望んでいるかはわからないよな、とふっと思い至るような太陽のこと。

(元)
月もまたどうか照らしてくれるなと思うだろうか 掛け布をとる
せーの、で、鳴らすぼくらの手のひらに透かして笑う日々があること
このあとは全部忘れてしまってもきみの魔法は二度ととけない



10. こんなに、とたとえあなたが笑っても百で足らない言祝ぎがある


・2022年4月
・アイドル短歌/Snow Man 深澤辰哉さん(お誕生日までのカウントダウン1首目)
・深澤さんのお誕生日5/5まで、100日間カウントダウンをしている方もいてすごいなあとは思ったのだけど、わたしはやっているうちに苦しくなりそうで、ただ、やれる限りのことはやってみようとも思ったので、4/25から10日間に凝縮して実施。
・4月発売の「週刊朝日」インタビューの中で、お誕生日の100日前から盛り上がっていることにふれられた深澤さんが「30日、いや10日でいいよ」と言っていたことも頭にあった。好意を受け取りはするけど、どことなく、自分に対して何でそんなにと思っているところがありそうな人が、たくさんたくさん大切にされて、少しでもおだやかに、うれしいことで満たされていたらいいな、と思う。

(元)
こんなに、とたとえあなたが笑っても百で足らない言祝ぎがある
ここは此岸 醒めない夢のただなかできみは静かに手招きをする
青白い星がいちばん熱いのは本当、あの日に見てた照明
街頭の広告にいるぼくたちを覚えてたくてさわった真冬
花びらにまみれてずっと笑ってたこの瞬間にいてほしかった
指先で形づくった風物のいつかは褪せることを愛した
瞬きと共にこぼれていったのは光であって涙ではない
すぐ届くものなら欲しくならないよアクリル越しに見透かす瞳
守らせてほしかったんだ花束を両手で受けるときのやわさで
きみの指す場所には夜明け 夢じゃない、脈打つ胸は痛いくらいに
深く息、座標を忘れず確かめて掴むアームのやわらかい揺れ




ご感想などあればぜひお聞かせください。そのほかなんでも、もう少し裏話が聞きたいとかでも大丈夫です。