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短歌と感想ほかまとめ

アイドル短歌アンソロのこと(テーマ短歌・感想)

短歌アンソロジー「アイドルが好き」について。

★ WEB版はこちらのnoteから!

まず、わたしはこちらのアンソロに、
・テーマ短歌「アイドル」への投稿
・エッセイ寄稿
・アンケート回答
以上3項目で参加しました。

このうち、アンケート回答以外のふたつ
・テーマ短歌「アイドル」へ投稿した自作
 手の中に抱いてたあかり遠景になってもきみの眼裏にあれ
・エッセイ「幾億のまばたき-シャッターを切ること、短歌を詠むこと」
については、作っている間に考えていたことなど、別で書くつもりにしています。どちらも相互に関わり合って出来ているところがあるので…


今回は、テーマ短歌「アイドル」について、皆さんの短歌を読みながら感じたことなど書いてみます。

全109首読んだのですが、それでも力及ばずで全首には触れられなかったのですみません…!あと感想というより本当に感じたこと、思考の断片というかんじです、漠然としてます。
触れられていなかったり短かったりするのは、その作品の良し悪しによるものではなくて、本当にわたしの言語化が追いついていないだけなので、ご了承いただければと思います。
また、わたしが書いていることで何か失礼な表現であったり誤解を招くようなものがあれば、お手数ですが教えていただければ幸いです。

ざっくりとした目次も一応つけておきます。


001〜009 星

001 「地上のことは知らなくていい」にドキッとしました。星、手が届かないもの、そうであってほしいものへの思い、なのかなあ。

008 「違わずに示せるもの」があるからこそのアイドル、それがどれだけ特別ですごいことなのか…と思うとなんだかくらくらしてきます。

009 「またひとり」ということは前にもあったんだ…と思ったのがひとつ。また、これは個人としての人格が死んでアイドルという存在になったということなのか、誰かの夢が潰えたということなのか…?とあれこれ考えてしまいました。

010〜017 光

013 「ぱち、と弾けた」の表現が好きです!コンサート会場で見る「光の波」はとてもいいよなあと思い出していました。

015 「光るのはいつでもやめていい」けど「君に見惚れたまま」…相反する感情はわたしの中にもある、と思ってドキッとしました。

018〜023 愛

018 「愛に見えて」いたらいいな、と思わずにはいられなかった。そうならない可能性があることもわかっているので…

021 「さっくり混ぜる」という表現が、お菓子を作るときみたいで新鮮でした。わたしは愛についてふれようとすると重たくなりがちなので、こんな風に軽やかな言葉も持ってこれるんだ!と…

024〜027 eye

024と027、025と026がそれぞれ対のようで、かつ、4首でひとつの世界にもなるかんじがして、わたしは027だったので、すてきな並びに入れていただいたな〜とうれしさを噛みしめていました。
024「わたしの目」と027「きみの眼裏」、025「琥珀」と026「青鈍」。アイドルの双眸やまなざしを詠んだ2首を、ファンの視点が入った短歌で挟むような…なんだかうれしかったです。

028〜030 I

029 全体を通して、アイドル視点っぽい短歌があまりなかったので新鮮でした。そして「僕はやさしい、よわい」…何を示しているのか本当にはわからないのですが、弱くないよ、そんなふうに考えられるひとは絶対弱くない、と声をかけたくなった。

031〜039 you

いろんな「you」、あなたへの短歌があって、その歌たちを031と039の2首で挟んであるのがすごく好きです。あなた/君で満ちていくかんじがある。

036 「レッスンシューズの蝶結び作るためだけ」、この「だけ」がすごくいいなと思って……アイドルのここが好き、とか、こうあってほしい、というような感情が詰まっているかんじがしました。

040〜042 世界

042 「信じなきゃいけなくなっちゃった」わかる、ほんとにそう、そういうとこある…と激しくうなずきました。

043〜046 夜

045 「金曜夜9時」「テレビ」もう完璧でした。あの番組しかない。こんなにバシッと示せるのすごい。

047〜051 魔法

051 「魔法解けるな」思う、思ってしまうんですよね…舞台とかコンサート、この時間が終わってほしくない、というのもそうだし、そもそもアイドルでいてくれること自体にそう願ってしまう。

052〜055 夢

052 アイドル視点っぽいなあと思って読みました。「まだ夢をみる」にある儚さ。なんだろう、終わりがあるとわかっていて、それでもなお、というかんじがするのかな。

056〜060 色

059 「ふたつめ」というのが気になって…「ひとつめ」は何だったんでしょうか。前の担当・推しとかなのかな。それともぜんぜん違うんだろうか。

061〜065 ♪

061 これはもうシンプルに口に出して言いたい、というか、誰しも言ったことがありそう。浮き立つようなきもちがぎゅっと短歌のかたちになっていて好きです!

064 こちらもわかる、あります、「からだぜんぶを鼓膜と」していることあるし、そうしたい、そうなりたい。

066〜072 笑

068 笑う、という言葉に対して「どこまでも水際」…ひやっとするものがあり、どういう背景なのか気になりました。できれば「笑顔を切り分けて」いるひとが穏やかに過ごせるならいいな。

073〜076 名

076 「Siriに名前を聞いた」のがいいなあと思いました。今、現代の話だし、誰にでも起こりうることで。ぬいぐるみにリボンを結んで名前を付けてあげた日がお誕生日になる、だったかな。そういう話も思い出しました。

077〜082 生

080 強い、迷いがない、と思って惹かれました。「ケーキの苺」という表現がいいですよね、いちばん特別なものだとすぐにわかる。

083〜085 駆・走

084 「結局は引力なのだ」ここがすごく好きです。そうか、あんな風に惹きつけられて、追いかけていきたくなるのは、引き上げてもらえるのは、引力だったのか…となんだか納得してしまった。

086〜087 願う

ここ、この2首並び、本当にそう…となる。どちらも本当なんですよね。「これからが毎日晴れで」あってと思うし、自分のこの感情は「エゴ」や「偽善」とも思う。すごく好きです。

088 祈る

もうほんとに、はじめから打ちのめされるというか…「変わらないものなんてない」現実はどうしてもあって、苦しくて仕方ないんですが、でも「祈れてしまう」、ここの…苦しいのだけど、祈れたことにやっぱり喜びというか、救いがある、ように思えて…噛みしめるように読みました。

089 推す

「返さなくたっていい」と言い切れるのがとても素敵だなあと思いました。「推す」姿勢としてすごく純粋で正しさを感じる。こんな風にあれたらいいなあ。

090〜092 永遠

一続きの祈りの詩編みたいだな、と読みながら感じました。結びが「永遠を」「むねに」「永遠に」で揃っているかんじがするからかな。大切な人へ向けるいちばんきれいな感情が言葉になっているような。

093〜095 羽

095 はじめの「だいじょうぶ、だいじょうぶだよ」こんなにやさしい言葉を知らない。ひらがな表記だからより一層、ほんとに羽根のようなやわさに感じる。

096〜098 好き

098 「好きだけ抱えておけばオーライ」明るくて好きです!からっとしていて眩しい。こんな風に向き合えるといいなあと思う。

099〜101 偶像

099 ぱっと目を惹きました、すごく格好いい…! 何より「その先を書き足す」がいいですよね。偶像という言葉から受ける、どことなくマイナスなものを含んだ印象をまるっきり変えてしまえる強さ。

102〜109 アイドル

106 シンプルに好きです。なんかこう…アイドルについていろいろ考えがちな内心を全部吹き飛ばしてくれるくらいの力がありました。

109 もうこれ以上ないくらいの大団円…! ここまでいろんな感情にふれて、自分の中にあるものを見つめ直したりもしたんですけど、「私も言える」ところに来られてよかった…という気持ちになりました。


というわけで、109首とても楽しく読みました!
素敵なアンソロジーを手に取ることができて、本当によかったです。また折に触れ読み返したい。

そのほか何かあればぜひ。