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短歌と感想ほかまとめ

アイドル短歌メイキング(雑誌表紙関係)

自担が掲載された雑誌(表紙や誌面、写真及び内容)からアイドル短歌を作ることが多々あります。
元を辿れば、Twitter(X)で度々拝見するファンアート。絵描きさんたちが雑誌の写真を元にしたイラストを描かれるのを、ずっとうらやましいなあと思っていました。わたしも絵が描けたらいいのに、あの表紙の、誌面の、写真のすてきだったところを表現できるのに。
そんな風に思い続けていたのですが、あるときふっと、必ずしも絵でないと表現できないということもないのでは? と気がつきました。絵でなくても、どんな写真で、どこがどんな風にすばらしくって、自分はどう感じたのか、どんな印象を抱いたのか、表せるんじゃないか?
短歌にしてみよう、と思ったのは、ファンアートとして何かを表現する手段のひとつに「アイドル短歌」を持っていたわたしにとっては、そこまで突飛なことでもなかったのかな、と思います。
……とはいえ、今こう書いていると、そうはならんやろという気も若干してきます。何で短歌にしようと思ったんだろうなあ(いまさら)。


初めて雑誌の内容からアイドル短歌を作ったのは、2021年の頭。2020年12月、anan No.2230に掲載された『「滝沢歌舞伎 ZERO 2020 The Movie」の軌跡 #09 洒脱 深澤辰哉(Snow Man)』がとてもよく、その記事及び写真から着想して短歌を作り、連作としました。

このときは本当に、たくさんの方がイラストを描かれていた記憶があります。それを見るのが本当に楽しくて、でも歯がゆくて、自分なりに何か表現したくて、おそらく半月は考え続けていたように思います。
何が好きなのか。どこに惹かれたのか。考えて考えて、どうにか言葉に換えて、出来上がった連作。今でもこの連作のことは自分でも忘れられず、大切に感じています。


そのあとからは折にふれ、深澤さんが雑誌の表紙を飾ったり、そのほか雑誌掲載があったりすると、見て読んで感じたことをアイドル短歌のかたちにしてきました。特に2022年は表紙含め雑誌掲載が多かったので、かなり継続して作ってきたと思います。

ここまで作り続けてくると、自分の中では比較的短歌のかたちにするのが当たり前にはなっているのですが……、先述の通り、はたと立ち止まってみると、いやなぜ? という気持ちにもなりました。我ながらどうやって作っているのか不思議すぎる。


そこで、雑誌から着想したアイドル短歌について、簡単ではありますが、メイキングをしてみようと思います。
対象のアイドル短歌はこちら。

前髪をくしゃくしゃにする、適当に ぜんぶわかっているひとの手で
ゆっくりと伏せては開くまばたきとあなたが言えばそうなんだろう
ただすこしおどけてみせるだけのこと 胸が詰まって泣きそうだった
くちびるに触れた小指の血色はあくまで淡く または篝火



来年2024年1月発売予定の「CYAN MAN 2024年2月号」表紙の深澤さんから着想した4首連作です。
参考:「CYAN MAN 2024年2月号」

普段は雑誌表紙の写真だけではなく、誌面の写真やインタビュー内容も含めて連作としているため、どうしても雑誌を実際に読んだ方でないと伝わりにくい部分がありました。しかし今回は、表紙からのみ着想したため、この写真が元であるということが説明しやすく、さらには公式のお知らせページにも写真が掲載されていて、実物を確認してもらいやすくなっています。
アイドル短歌を作る際には、着想元(アイドル本人、楽曲、パフォーマンス、雑誌記事等)がわからなくても読めるものを目指してはいますが、メイキングを行う上では、着想元が明確になっていた方がより分かりやすいものになるかと思います。そのためこちらの連作を題材としました。


- 01 きっかけ

今回この連作を作ったのは、フォロワーさんからお題をいただいたのがきっかけです。
Twitter(X)で何かお題を出してもらいたい〜と言っていたら、「CYAN MANの深澤さん」で、と声をかけてくださいました(丁度その日に上述の雑誌情報が解禁になっており、Twitterで絶賛アワアワしていたわたしをご覧になっていたそう)。ありがたい。

- 02 イメージや書きたいものを決める

何を書こうかな〜とふわふわ考えていきます。この時点では本当に、思い浮かべているのはイメージでしかなく、はっきりした短歌のかたちにはなっていません。
今回考えていたのはこんなかんじでした↓

・前髪くしゃくしゃ
・光の入っていない瞳
・ふしぎなポーズ くちびる
・リア恋らしさ
・3〜5首くらい?

……これでよく連作になるなというかんじですね。
時間としてはここまででトータル1〜2時間(実際には何か別の作業の合間に考えていたりもするので大体ですが)。これくらい考えたら、実際に言葉を繋げて作っていきます。

- 03 作り始める

言葉は、部屋の中より外にいるときの方が出てきやすいです。移動中、歩いているときやバス・電車に乗っているときなど、よく考えています。頭から並べていくというよりは、何かしら浮かんだものをくっつけたり離したりして、収まるところを見つけるかんじ。
よさそうなフレーズが出てきたら、iPhoneのメモ帳に書き留めておきます。たまにメモしそびれて忘れるときもあるのですが、そのときはもう気にしないことにします。忘れたということはそこまでこだわらなくていいんだ、もっといい案が出るんだろう、と思うようにする。そちらの方が結果よくなることが多いです。

- 04 実作

ここから先は、実際に作った順で、どんなことを考えていたかなど書いてみます。

前髪をくしゃくしゃにする、適当に ぜんぶわかっているひとの手で
くしゃっとなっている前髪のかんじがいいなあと思っていたので、イメージのところで浮かべた「前髪くしゃくしゃ」をそのまま持ってきています。
本当はヘアメイクさんがきちんと整えてくれてあの状態なのはわかっているのですが、ご本人が自分の手で無造作にくしゃくしゃする場面を思い浮かべていました。深澤さんの姿を書くときに、ご本人は特に意識していないで、あくまで軽くやっていること、といった雰囲気を出したくなってしまう。そのあたりの感情が下の句に出ているかなと思います。
この短歌は割とするっと出来ました。最終的な直しもほぼなし。一字あけを入れるかどうか、「全部」と漢字表記にするか……などとも思ったのですが、結局は髪をかき混ぜる仕草はそれだけで独立させ、そこにフォーカスする感覚を含めたかったので、このかたちになりました。

くちびるに触れた小指の血色はあくまで淡く または篝火
悪戦苦闘した短歌。
あのふしぎなポーズを書きたい、と思ったものの、どう書いたものか悩み、しばらくは写真を拡大したりなんだりしていました。そのうちふっと、唇の色よりそこに触れている指先の色の方が白いのでは、と感じてきて、白魚のようとも言われる手指の美しさを改めて意識。そこにふれた短歌にしよう、と思ったら「くちびるに触れた小指の血色は」がすらっと出てきました。
そのあとをどうするかで延々悩み、「あくまで淡く」は比較的すぐ決まったのですが(見たまま素直に言った感)、最後の7音が出てこない。どうしようかな、と思ううち、ふっと指先の、本当に爪の先だけほのかに赤くなることってあるよな、と考えました。その様子を、光が灯るよう、と思ったところで、「篝火」という言葉が浮かんできた。
Googleで検索をかけて、イメージとしても大きく外れていなさそうなことを確認。よさそうだな、ということで、こうなりました。このあたりは正直感覚でやりすぎて説明になっていない気がします、すみません……。
ちなみに、くちびる、を「唇」にしようかと思って漢字も当てましたが、かっちりしすぎて、あの写真で見るやわらかさが出てこないと思い、元のままひらがな表記としました。

ゆっくりと伏せては開くまばたきとあなたが言えばそうなんだろう
ただすこしおどけてみせるだけのこと 胸が詰まって泣きそうだった

この2首はほとんど同時進行で考えていたもの。どちらもリア恋らしさ、を書こうとしていました。
具体的には、「ただすこし〜」の上の句が出来たところで、下の句を一回置いておいて、「ゆっくりと〜」を作りました。こちらの短歌ははじめからこのまま出来ていた。内容としては、パフォーマンスのときにするウインクをあくまで「まばたき」と言い張る深澤さん、というところから来ています。
「ただすこし〜」は、深澤さんご本人は大して意識もせず普通にしている言動が「リア恋」と言われることについて、それに(勝手に)振り回されている側のきもちを入れ込みたかったものです。これも割とそのままですね……。

- 05 並び替え・完成

はじめにイメージした中にあった「光の入っていない瞳」については形にならなかったのですが、まあそこにこだわらなくてもいいか……ということで、出来上がった短歌の並びを整えます。
並べてみるのも割と感覚でやっていて、短歌自体の長さであったり、一字あけや句読点・記号の有無など、バランスを見ながら落ち着くところを探します。たとえば、一字あけが2首続くと微妙かなあ、とか。本当にそれくらいのレベルです。
また、短歌をTwitterに載せる際に画像をつけることが多いので、画像加工アプリ(Phonto)で実際に組んでみながら調整することも多いです。一字あけや句読点、漢字ひらカタ表記の最終的な調整もここで。
あれこれ並び替えした結果、「くちびるに〜」がいちばん短く、他3首とは少し雰囲気も違うかな?という気がしたので、この短歌だけ少し別扱いにすることにしました。
画像の背景や文字の色は、短歌自体の印象と、着想元の写真からイメージを拾ってきます。今回はなんとなく青みがかったグレーがいいかな、と思ってこんなかんじになりました。
短歌の配置は、基本的には縦書きで、1首1行にするようにしています。が、何となくバランスが悪いなあとか、もう少しアクセントをつけたい、というときは適宜変えています。今回も縦書き1首1行だとなんとなく、うーん? となったので、いろいろいじった結果普段とはまったく違う雰囲気になりました。


以上、ものすごく簡単かつ感覚的な部分が多いメイキングでした。
何かあればこちらまで↓