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短歌と感想ほかまとめ

企画「みんなでいちごつみ」に参加しました

企画「みんなでいちごつみ」に参加しました。

皆さんの短歌に刺激を受けて、前向きにしっかり作ることができました。ひとりで作っていると、どうしても内容が凝り固まってくるので……。短歌を読むのも、そこから摘んでいくのも、シンプルに楽しかったです!
出来上がったすべての短歌を読んでいくのも面白い。その語を摘むんだ?! とか、同じ語を摘んでもこんなに違うんだ、とか。
Twitter上での全文公開に加えて、ネプリも発行していただいていて、紙媒体で手元に置けるのがすごくうれしかったです。編集も本当に素敵でした。7月14日15時頃まで出力できるそうです。
改めまして、企画してくださった綴さん、ご一緒させていただいた皆さん、ありがとうございました!

以下、自分が提出した短歌について/詠んでいただいた短歌について/自分が詠んだ短歌について、簡単ですがまとめました。








自分が提出した短歌について

 ・・・ゴーストの出てた写真の真ん中であなたは伏し目がちに笑って

何について詠もう、と考えたときに、好きなものがいいかな? とかなりシンプルな方向へ行ったので「写真」かつ「伏し目がち」な「あなた」となっています。
ゴーストは写真に写り込む光の帯のこと。写真を撮ったときにその形で見えていた訳ではないけど、そこにあるもの。そういう光の跡が残っている中にいる人を、自分はいつか確かに見ていて、でもその表情を全部覚えているかといえばそうではない。おそらく写真を見て、ああこんな顔をしていたんだ、と分かることもあるはず。

……と、いうような、いつか忘れてしまうこと・それでも忘れたくないことの揺らぎを描きたかったのですが、伝わりにくい。
「ゴースト」の意味が取りにくく、まあ普通に読んだら心霊写真だよな……と思って、もう少し工夫できただろう、と後悔しました。

正直に言うと、参加者全員の短歌がはじめに提示されたとき、自分の短歌があまりにも至らなく思えてしまって、かなり苦しかったです。言い訳にしかならないのですが、こちらを提出する時期、あまりにも短歌が浮かばなかった……。
それでも、もっとどうにかして違うものに出来たんじゃないか、という悔しさ。また別の機会があれば活かしたいです。


詠んでいただいた短歌について

上記の短歌から摘まれる単語は「ゴースト」が多いかな、と個人的には思っていました。
しかし今見ると本当に意味を取りにくい上に単語も摘みにくい短歌だな……皆さん作りにくかったのではと思います。それでもこんなに素晴らしい短歌を見ることが出来て救われた気持ち。

○×のクイズだらけの教室のぼくの見えない真ん中の択(鷹野しずかさん/真ん中)

「真ん中」は揺らがない、はっきりしたものであることが多いように思うんですが、「見えない」のか…と思って、でも違和感はまったくない。確かに「教室」の中にいて、「○×」どちらにもなれないことってある。言葉の連なりが意外で、でも自然で、そこがすごく好きでした。

インカメの写真なんだね口元のほくろは反転してもかわいい(綴さん/写真)

「写真」からこうなるんだ〜…と思ってすごくワクワクしました。インカメ、反転、情景が間違いなく浮かんで、かつ、この感覚わかるなあ、となるかんじ……。「かわいい」などの形容詞を使うの、自分だと安易なかんじになったりするんですが、そうならないでここは絶対「かわいい」だ、と感じられるのが素敵。

地獄にもユートピアにも行けなくてゴーストになりきって彷徨う(わらびもちさん/ゴースト)

「ゴーストになりきって」がとっても好きです。「なりきって」、だから本当はそうじゃないけど、自分で狙ってそう見せている、主体の意思を感じてそこに惹かれました。どこにも行けないのはかなり苦しいと思うんですけど、ただ翻弄されている訳ではない。もちろん楽ではないけど、それは救いになると思う。そう思いたい。

伏し目がちなにか真面目を言っているきみを撫でれば平面 つるり(風林さん/伏し目がち)

「伏し目がち」から「平面 つるり」に着地するの、すごいな!!? と思ってもう、しばらくぼんやりしてました……すごい……。「きみ」はスマホ画面の向こうの人なのかな、と想像して読みましたが、情景や動きが自然と浮かんできました。「撫でれば」のやわらかさと、でも指先がすべっていくかんじの物悲しさ、両方あるのが好きです。

引き絞る弓持つ腕が震えても真ん中狙え 外せば失恋(うめおさん/真ん中)

キューピッドだ! と思ってびっくりした短歌。元の短歌からこの短歌が生まれるの、すごい、まったく想像がつかなかった。摘んでもらった「真ん中」という語の持つ本来のまっすぐさとか真っ当さがこの上なく発揮されている……。「腕が震えても」も好きです、心底本気なんだってことが正しく伝わってきました。

クリームソーダをこぼして落ち込んだ日もゴーストタウンには同じ夕暮れ(碓氷さん/ゴースト)

「ゴーストタウン」、なるほど!! となりました。「ゴースト」そのまま摘まれるかなとは思っていたけど、これは想定外でとっても面白かった。「クリームソーダをこぼして」しまうの、こういう展開がとても好き。それでも「同じ夕暮れ」であるのは絶望なのか、救いなのか、どちらのイメージだろう……と考えながら読みました。

ダイニングテーブルの真ん中に花を置き続けるのが贖罪のつもり?(独活部さん/真ん中)

テーブルに置かれる「花」と「贖罪」、と考えて、これはもしかして「ゴースト」側の短歌なのか、と思い至ったときの背筋が冷える感覚。しかもまったく心穏やかではなさそう。元の短歌のふわっとしたところから、切れ味の鋭いサスペンスのような物語が展開していくのが好きで、ぐっと引き込まれました。


自分が詠んだ短歌について

薄青い瞼にふれておれじゃない名前を呼んだ子を揺り起こす

 ・・・瞼透く星の光に照らされて夢から覚める(覚めてしまった)/碓氷さん より「瞼」

摘むのは「瞼」がいいと即決。これは完全に自分の好みが出てます(瞳や眼差しに関するものが好き)。また、夢から覚めた人を見る側を描きたいな、と思ったので「おれ」が出てきてます。「瞼透く」がとっても綺麗で、その雰囲気からも繋げたかった。

くたくたに煮込む時間のほとんどをきみの言葉で埋めていく夜

 ・・・マフラーを編むことシチューを煮込むこと《祈り》は広辞苑にこう載る/独活部さん より「煮込む」

独活部さんの短歌にある、人肌よりもう少しあたたかいかんじ、すごく素敵だと思っていて。ただ、その温度感を引き継ぐにはどうしたら……と結構悩みました。結果「煮込む」をとったんですが、「広辞苑」を摘もうかとも思っていたので「言葉」が出てきてます。

まだ出ない空港リムジンバスのなか何にもなれなさを抱きしめる

 ・・・見送りを上手に済ませばかでかい空港に慰められている/鷹野しずかさん より「空港」

迷いなく「空港」を摘もうとしたものの、語の存在が大きく完璧だったので少しずらして、リムジンバスにしました。空港にいてもまだ目的地は先で、バスもまだ出ない、そういう宙ぶらりんな感覚と、主体とを重ねて詠みたかった。イメージした空港及びリムジンバスは帰省先の長崎空港

あんたには泣かされないと言い切ってとびきり辛いラーメン啜る

 ・・・辛いのとジェットコースターとサスペンス 「好き」に刺激が多い私です/うめおさん より 「辛い」

ストレートな「好き」が印象的だったので、そこから反対方向に振ってみたくなりました。苦しいときにこの「私」ならどうするんだろう、という想像の短歌。「泣かされない」と言いつつ泣いたってラーメンのせいにできるシチュエーション。何を摘もうか悩みましたが、感情(=つらい)にも繋がる「辛い」に。

よれかけた口紅なんて簡単に塗り直せるの 直せちゃったの

 ・・・生ぬるい空気が冷えた口紅に触れて独りと思い知る夏/わらびもちさん より「口紅」

「生ぬるい」と「口紅」で悩んで、普段詠まない「口紅」にしました。「独りと思い知る」がとてもいいなあと思っていて、でもたださみしいだけにはしたくないなあ、と塗り直す動作を入れました。凛としている、けど、少しだけ揺らぎもある人のイメージ。

前聞いた話をもっかいしてもらう僕と思って手を振るくだり

 ・・・アウトロが流れて次がもう分かる予感は過去と手を繋いでる/風林さん より「手」

とにかく手や指というパーツが好きなので摘む語は即決。ただそこからどう膨らませるか結構悩み……また、風林さんの短歌がとにかく綺麗で、この1首で完結しているようにも思ったのですが、そこにどうにか繋げられたら、と考えながら作りました。繰り返し聴いた歌、話。

蟹食べに行こうよふたり黙ってて平気な国にずっと住もうよ

 ・・・川底はとても静かで眠るのにいい場所ですと蟹が笑った/綴さん より「蟹」

「蟹」は詠んだことないな! と思ったので絶対に摘みたかった。とはいえ蟹……と考えたところで、蟹を食べると無言になる、を思い出したので(ベタかなとは思いつつ)そこから膨らませて作りました。慣れている人ほど一緒にいるとき喋らなくても平気になるのが好きです。


以上7首。1首ずつは繋がっていませんが、基本的にすべて、誰かと誰かの話になるようにイメージして作っていました。なんとなく、そういったテーマ? 軸? があると作りやすいので。
皆さんの短歌が本当に好きで、読むだけで楽しかった……! さらにはどの語を摘もうか考えるのも面白くて、集中して取り組めたように思います。
すてきな企画に参加できてよかったです、ありがとうございました!