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短歌と感想ほかまとめ

いちごつみのこと

2023年12月から2024年1月にかけて、2名の方と計3回いちごつみを行いました。その記録及び自作解説をしたいと思います。
はじめに、これはいちごつみに限ったことではありませんが、解説とは言いつつも、そう読まなければいけないという訳ではありません。もちろん、違った解釈をしたらだめということは決してありません。わたしの短歌やブログを読んでくださる方には、自由に楽しんでいただければと思います。

ちなみに、いちごつみってなに? という部分については、こちらの記事が詳しいので、知らない方・気になる方はご参照ください。


3回分のいちごつみについて、ひとつの記事にまとめたので、結構なボリュームになりました。
見出しをつけておきますので、適宜ご利用ください。
※流れがわかりやすいように、いちごつみのお相手の方の短歌もそのまま載せています(+一言感想つき)。



2023年12月 遊佐さんとのいちごつみ

 ― 首数:10首(各5首)
 ― 奇数首:遊佐さん、偶数首:しま
 ― 期間:2023.12.19~2023.12.21
 ― 方法:Discordメッセージ
 ー 画像作成:しま



総括

遊佐さんとの初いちごつみ。首数が少なかったのもありますが、かなりのスピード感で進行しました。楽しかった!
いちごつみ全体を10首連作のように捉えて、ざっくり起承転結を想像しながら作りました。自分が偶数首担当=最後の短歌を作る役割ということで、最後の方はどう着地させるか結構頭を悩ませていた気がします。
遊佐さんの短歌とわたしの短歌はわりと作風が違っているかな? と思っていて、そのふたつが組み合わさることでの化学反応というか、バランスが面白いなあと感じました。

計10首(各5首)

01 赤ちゃんが人差し指を握るみたいに甘えてくれてもいいのよ?
遊佐さんの短歌を読むと、おすましな女の子が思い浮かびます。かわいい!


02 キスをする雰囲気すらも掴めないぼくらの恋は依然赤ちゃん(赤ちゃん)
「人差し指」を摘むといつも通りになりそうだったので(手指が好きすぎる)、普段ならほぼ詠まなそうな「赤ちゃん」を摘みたいと思っていました。全体の傾向としては恋愛系にしようかな? というイメージがあった。


03 口紅はキスの後にも直すってあの子が言った 踵をあげる(キス)
やっぱりかわいい! きゅっと踵を上げる情景が浮かびます。遊佐さんの短歌のかわいらしさ、水森亜土のイラストを連想するなあと思いました。


04 灰かぶり姫の真似してはしゃいでるきみと遊んで掃除は後で(後)
「踵」を摘みたかったのですがいろいろあってこうなりました。踵→靴を履かせる→シンデレラ→大掃除、というイメージ。時期的にも年末で、大掃除したくないな…と思っていたのが反映されている。


05 親指を唇に添え考えるクセを真似てもあの子になれない(真似)
少し方向性が変わった? と思った短歌。「あの子」ってどんな子だろう、とイメージが膨らみました。


06 ずいぶんと遠くをのぞむ目をしちゃうクセが好きって言ったら怒る?(クセ)
「あの子」が気になりつつも、恋愛系=恋人同士のイメージは引き続き持っていたため、ふたりにフォーカス。彼氏が彼女に言うようなイメージでした。


07 来世でもまた会ったなら遠くまできたもんだねと笑い合おうよ(遠く)
来世!! となった。話が展開していくきっかけを作ってくれるのは遊佐さんだなあとつくづく思います。SF(すこしふしぎ)な要素があって面白くってすきな短歌です。


08 またねって口にしながらお互いの手を離さないことがあったね(また)
SF要素を引き継ぎたくてこんなかんじに。「来世」と言っている「現世」の前にも巡り合っていたふたりをイメージ。


09 教わったピリカピリララとなえると強くなれるの口紅をひく(口)
「ピリカピリララ」はおジャ魔女どれみの呪文、ということで、発想がすごい。まず自分じゃ出てこない単語だなあと思います。


10 指先の真っ赤な糸をそっとひく誰に繋がるかはわかってる(ひく)
巡り合わせのあたりから「真っ赤な糸」が出てきた。また、1首目「人差し指」とも繋がるように、と思っていました。


2024年1月 遊佐さんとのいちごつみ

 ― 首数:20首(各10首)
 ― 奇数首:しま、偶数首:遊佐さん
 ― 期間:2023.12.30~2024.01.02
 ― 方法:Discordメッセージ
 ― 画像作成:遊佐さん



総括

遊佐さんとのいちごつみ2回目。1回目が10首(各5首)であっという間に進行したこともあり、倍に増やしてやってみることに。とはいえ結構なスピード感なのは変わらずでした。
今回はわたしが奇数首担当だったので、今度はどうやって始めるかで頭を悩ませることに(どちらにせようんうん悩んでいる)。1回目がかわいらしい雰囲気のいちごつみだったので、今度は薄暗くしてもいいかな? と思い、若干ダークめでスタートしました。
年末年始でいろいろあって、大変なときだったとは思うのですが、一緒に続けてくださった遊佐さんにはとにかく感謝しかないです。短歌も少しずつ明るい方へ向かっていくような雰囲気があって、本当に勝手ながら、よかった、と強く感じました。

計20首(各10首)

01 かんたんに折れる鎖骨の凹凸を他の誰にも知らせずにいる
わたしの短歌は気を抜くとどこかしら薄暗くなるのですが、この短歌も例にもれず……というかんじです。鎖骨は引っ張ったり強い力を加えたりするだけで簡単に折れるらしい、という話を聞いてから、怖いけど何だか気になってしまっていて、それを入れ込みました。


02 私など食べるか寝るか起きるかで 誰か代わりに生きてくれたら(誰)
遊佐さんからかなり暗めな短歌が返ってきて新鮮でした!


03 冷やごはんレンチンしないまま食べる泣きわめいても妥当な理由(食べる)
冷たいごはんってわびしくて本当につらいよなあ、という短歌。つらいけど、創作する上では結構好きで出してしまうアイテムでもある。


04 杖を持たないとまっすぐ歩けないぼくの生きてる理由はどこに(理由)
引き続き暗め……! どうやって摘もう、どうやって返そう、と悩みました。


05 わからないことだらけでも日々を行くなるだけ武器は持たないでいく(持たない)
前の短歌を受けて、暗いままで行くのもちょっと違うかも…? と思い、若干日が差すような雰囲気にしたかった。


06 こんなときどういう武器を選ぶのか教わってない涙は透明(武器)
「涙は透明」がきれいで本当に好きです。「涙」があるので少しまだ暗さはあるんですが、それだけじゃない雰囲気が見えてきたかんじ。


07 透明なコップに満たす水道水にさえ光は内包される(透明)
ありふれた光景かもしれないですが、少しでも救いというか、明るさが出たらいいなと思って作った短歌。この中だとかなり自分でも気に入っています。


08 神様の光がここに届かないそれでも私目を開けている(光)
「目を開けている」の凛としたかんじが大好き!


09 届かない郵便を待つ明日にも明日があるのを恐れはしない(届かない)
「あした」と「あす」にしたくて、ちょっと遊びを入れてみた短歌。
完全に個人的な話になりますが、明日が来るのが怖いというか、仕事嫌だなとかそういうことを思って眠るのがこの数年当たり前になっていて……でもそんなことを思わず眠れたらいちばんいいよな、と思って出来たところもあります。


10 満月を指差し「故郷」って言うの、ほんとに帰る恐れがあるな(恐れ)
ちょっとお茶目な雰囲気! この短歌が戻ってきたとき、遊佐さんの短歌の好きなところがぎゅっと詰まっていると思ってうれしかった。どことなくかぐや姫っぽいイメージ。


11 何もかもだめになっちゃえ 満月のせいにしたって誰も責めない(満月)
メンタル不調、月の満ち欠けにも影響されるようなので、そのイメージで。嫌なことやつらいこともあるけれど、思い悩むのではなくて、笑い飛ばすようにしたかった。


12 だめですか?落ち葉をわざと踏んでってちっちゃく憂さ晴らしをすること(だめ)
10首目に引き続き、暗さもありつつちょっとお茶目な楽しいかんじがある! 好きです。


13 きみに会う日付にちっちゃく丸をしてやっぱりおっきく書き直しとく(ちっちゃく)
カレンダーの日付部分に○をつけて、それを大きく書き直すと、「二重丸になる」という遊佐さんの解釈がとってもうれしかった短歌。元々は単に書き直すくらいのつもりだったのですが、この解釈を聞いたらもう……二重丸、よすぎる。


14 いま見たら日付の横に雨マーク それならわざと傘は持たない(日付)
濡れてもいいってことなのかな? たとえば泣いていても濡れちゃえば目立たないとか…? とイメージして読みました。
ちなみに、遊佐さんにあとからお聞きしたら、迎えにきてもらって相合傘になるように傘は持たない、ということで、本当にかわいい…!! となりました。


15 だとしても虹が出るのは足元にうつむく先に雨の向こうに(雨)
雨の後には虹が出ますが、空にかかるだけじゃなくて、足元とかアスファルトの上に小さく出ることもあるなあ、と思って作った短歌。あとは、何となく「だとしても」で始めてみたかった。


16 太陽で目が痛いからうつむくも覗き込まれちゃうから意味ない(うつむく)
太陽が覗き込んでくるイメージが膨らんで、茶目っ気があっていいなあと思いました。かわいい!


17 きみの顔覗きに行くよ苦笑いだって笑顔と人は呼ぶだろう(覗き)
前の短歌の覗き込んでくる太陽が好きだったため、この短歌も太陽目線(?)にしてみた。


18 あなたの名前を呼ぶときいつもより大きい声が出せちゃう不思議(呼ぶ)
「いつもより大きい声」っていいなあ…としみじみ感じました。わたし自身、コンサートに行ったとき、普段では出ないような声が出せたことがあるなあとも思い出しました。そして全体的にかなり前向きなかんじ!


19 不思議って一緒にいるといくつでも たとえばこの手を繋げてること(不思議)
盛大な字足らずをやらかす……(すみませんでした)。最初は「不思議っていくつもあってたとえばこの手を繋げてること」としていました。まったく気づいておらず、でもどうにか修正できてよかったです。


20 たとえばきみが大事だと言うことがかんたんなんて知らなかったよ(たとえば)
1首目の「かんたん」にも繋がるようにしてくれている! そしてこのからっとした明るさ、軽やかさ。
20首全体として、はじめの、わたしの作った薄暗めのところからここまでゆるやかに変化して、最後明るいところに着地できて本当によかったです。


2024年1月 昨さんとのいちごつみ

 ― 首数:50首(各25首)
 ― 奇数首:しま、偶数首:昨さん
 ― 期間:2024.01.19~2024.01.25
 ― 方法:Discord専用サーバー
 ― 画像作成:しま



総括

昨さんとの初いちごつみ。各25首ということでこれまでより首数が多いため、どうなるのかほとんど想像がつきませんでした(わたし個人として、これまでに経験したいちごつみでは各15首が最多だった)。そのため起承転結のことは基本的に考えず、その場その場の変化や流れに身を任せることに。
もうひとつ自分の中で決めていたテーマ(?)は、昨さんの作風に寄せてみる、でした。あまり自分では作らないタイプの短歌だなあという感覚があったので。結果として、まあまあ寄せられたかもと思うところと、やっぱりぜんぜん違うな、と思うところとありましたが、どちらかというと後者が強かったかな……。なかなか寄せられるものでもなかったです。

計50首(各25首)

01 雨の日のねむい匂いを吸い込んでこのまま煙草にしちゃいたかった
スタートは思い切り自分の好きな要素を詰め込んでみた。何というか、手癖が出てるなあという気がする。


02 銘柄を覚えようにも匂いしか記憶になくて問い合わせ 肺(匂い)
「煙草」は摘んでないのに煙草の「銘柄」の話になっているの、すごいな~!! と思いました。何となく「肺」で終わるの、昨さんっぽい、気がする。


03 ざわめきに名前はあるか 問い合わせメールにもらう自動返信(問い合わせ)
あんまり普段使わない単語を…と思った結果「問い合わせ」を摘みました。「ざわめきに名前はあるか」フレーズとしては気に入っているけど、どういう意味? と聞かれるとよくわからない短歌だなあと思う。


04 イニシャルと出会った日付羅列してメールアドレスは恋の遺言(メール)
「恋の遺言」いいですね…!! 昨さんのこの言語感覚、すごく素敵だなあと思っていて……聞きなじみのある単語だけど思いつかない組み合わせや、少し変わった(でもわかる気がする)言い回しで、どこかぴりっとスパイスが効いているかんじがします。


05 あのときの人とは別の人といて(あれが終電)日付が変わる(日付)
「恋」の要素があるなあと思って、恋人同士のようなかんじに。ただストレートに幸せそうだったり甘かったりするのは違うかな…と少し影のような要素も入れてみました(あのときの人とは別の人)。


06 じゅうにじを超えない終電 じゅういちじ過ぎの夜行で また会いたいな(終電)
前の短歌、「日付が変わる」だから、「終電」と言いつつまだ夜十一時台なんですよね。単語を摘むだけじゃなくて文脈ごと繋げてくれているかんじ、この短歌に限らずですが、すごい……。


07 繋がれた手がいつまでも冷たくて心は積載量を超えない(超えない)
5首目で若干影のある恋人たちを出したので、そこから引き続き。手は繋ぐだけの仲だけど、一線を引いているようなかんじがしますね。


08 城壁は冷たくあって わたし特段困ってはないはず、なのに(冷たく)
ここで「城壁」が出てくる! なぜ……発想の繋がりがすごい。これも「超えない」ものとしてのイメージなのかなあ。


09 きみの目の揺らいでるのがうつくしくお願いもっと困ってほしい(困って)
これ、自分で作っておいて、若干きもちわるいな……と思いました。下の句がちょっとべちゃっとしている。「困ってほしい」ってなんだろう。


10 開く目が大きくないとダメなんて言ってなかった まぶしい みたい(目)
どういうことなんだろう? と頭を悩ませた短歌。目はぱっちり大きい方がいい、とかそういう言説と、でも実際大きく目を開くのってまぶしいしつらいこともあるよね、というようなことかなあ。全然違ったらすみません。


11 光あれとかってぬかす神さまはポンコツみたい苦しいばっか(みたい)
「まぶしい」から「光」へ連想。あんまり普段摘まない語を選ぼうとした結果「みたい」を摘みました。これは結構自分でも気に入っている短歌。


12 え そうじゃん ぬか漬け食べて寝たらいいいちばんいいって! 言ってたキミは? (ぬか)
「ぬか漬け」が出てくるとは思わなくって……笑 これ、いちばん度肝を抜かれた短歌でした。びっくり。そして自分でももっと自由にやろう! というきもちになった。


13 泣きながらごはんいっぱい平らげてぜんぜん平気そうじゃんわたし(そうじゃん)
ということで(?)「そうじゃん」を摘んでみた短歌。ただし内容としては割と自分のやりがち要素が強い(ごはんの話が好き)。


14 言われればごはんですよの経験はなかったですね パン派は寝てます(ごはん)
ごはんですよ」……もうこの辺り昨さんすごいな!! と思いつつ読んでました。発想が柔軟すぎる。


15 経験値1から上がんないバグをたったひとつの個性とされる(経験)
これも、「経験」そのままじゃなくて何かひねりたいな~と思って「経験値」にしてみた。自分としてはちょっと冒険。


16 今さっきうだつの上がんない君が『確変です』って一抜けていた(上がんない)
流れとして、何となくゲームっぽさが出てきて面白かった。「確変」も単語としては知っているし分かるけど、短歌に入れたことないなあ……。


17 ゴールするときは一緒の約束でさっきまでなら好きだったのに(さっき)
「一抜け」されてしまったので、マラソン大会とかでありがちな情景を詠んでみた短歌。この辺り若干素というか、うっすら暗い部分が出ている。


18 人生でゴールテープを切ったことなくても最後義務があります(ゴール)
昨さんの短歌の、この切れ味というか……さっぱりしているけど持ち重りのするかんじ、すごいバランスだなあとつくづく感じる。


19 もみくちゃになっても最後の最後までわたしはわたしでいられる権利(最後)
「義務」ときたので「権利」を持ち出したかった。なかなかしんどい日々ではありつつ、どうにかこうにかやっていけますように、の気持ちも込めてます。


20 きもちよさでもみくちゃくちゃになれたら生きてる証 原型はない(もみくちゃ)
「もみくちゃくちゃ」、声に出して読みたい。定型にぴったりはまっていなくても自然というか、音として読めるかんじ。内容の鋭利さに対してこの自由さがあるの、おもしろい……。


21 原型がわかんないまま組み立てるおそらく心おそらく体(原型)
個人的には、この辺りからわりと自由度が増したような気がしてます。即興性というか、全体の流れよりひとつ前の短歌から受ける印象でぱっと返すようなイメージ。半分くらいまで進んできて慣れたのもあるかもしれない。


22 組み合わせ次第では君と付き合う あとは命日の遅延になる(組み)
「命日の遅延」これ大好きです。本当にこの言葉の並び、思いつかない。


23 式次第どおりに済ます生前葬ぼくらはここで拍手する役(次第)
個人的に結構気に入っている短歌。わりと昨さんの作風に寄せられたような印象(勝手に)。


24 これ以上拍手喝采浴びせても他人事みたい こうかはないよ(拍手)
「こうかはないよ」がゲームの表記のようでもあり、こうか=効果=校歌?と想像できたりで、面白いなあと思った。ひとつの音で複数の意味を持たせるの、膨らみが出ますね。


25 さよならはこうかふこうか聞こえないパイプ椅子ってやけに冷えるね(こうか)
「こうか」をさらに違う言葉に変えたくてこんなかんじに、本当だったらひらがなより漢字で書いたほうが相応しいかな、とは思いつつ……。何となく式典っぽさを引き継いだ結果、「パイプ椅子」が出てきた。


26 着慣れないジャケットを乗せパイプ管に擬態できる 5年かかった(パイプ)
「擬態」から何となく、社会人とかサラリーマンとか、そういう世間一般的に求められる姿をイメージ。「5年」というあたりがリアルだなあと思う。


27 実のとこ石の上には5年いてかなしむのってどうやんだっけ(5年)
「石の上にも三年」と言うけれど、それよりもっと要領が悪かったら三年以上になるかな、と思ってこんなかんじに。イメージは社会の荒波にもまれるうち摩耗しきったサラリーマン(しんどい)。


28 私でもかなしむ資格取れてたし誰でもできる布団の中で(かなしむ)
「どうやんだっけ」と聞いたら「誰でもできる」が返ってきて、おお!!と思わず声が出ました。この切れ味、昨さんの短歌だ~と思う。


29 掛け布団わけたげるってそういうの何度やってもよくは言えない(布団)
前の短歌からどう繋げるか考えてはみたものの、うまい返しが浮かばず、まったく違う方向へ……。気遣いであるとかやさしさをさりげなく渡せる人っていいよなあ、そんな風になかなかなれないなあ、というやっぱり若干薄暗めの短歌。


30 灰皿になれますように何度でもお願いしてる 穴は開けない(何度)
どうやったら「灰皿になれますように」が出てくるんだろう……?!!


31 両耳に増やした穴の向こうから吹いてくる風 これは合法(穴)
「穴」をどんな穴にしようかな、と考えた結果、ピアスホールになりました。「これは合法」がわりと気に入っている。


32 カフェオレとカフェラテのことおなじだとほら吹いてくるみたいにだっこ(吹いてくる)
「ほらを吹く」になるとは思わなかった……。カフェオレとカフェラテ、未だに違いがわかりません。聞いたときは一瞬理解するけどすぐに忘れる。


33 僕なしじゃ立ってらんなくなるくらいおんぶにだっこしたげたかった(だっこ)
09の短歌と少し似通ったものを感じる。自分で作っておいてなんだけど若干べちゃっとしていてきもちわるめ。


34 明日の夢 荒野にひとり立っていて夜を伸ばして朝と結婚(立って)
……と思っていたら「ひとり立っていて」が返ってきて、よかった~と思いました。勝手に軌道修正してもらったきもちになっていてすみません。凛とした雰囲気で好きな短歌です。


35 ここからはおひとりさまで行かせてね辛くはないのおあいにくさま(ひとり)
格好いい短歌を返していただいたので、それを活かしていきたかった。「おひとりさま」と「おあいにくさま」は完全に言葉遊びというか、意味よりリズム重視で使ってます。


36 放たれた 自由になれよ希望たち 会いに行かせてもう奪わない(行かせて)
「自由になれよ希望たち」が格好いいですよね……。


37 大声で叫ぶわたしは奪わない奪わせやしない手離すもんか(奪わない)
この短歌も35の流れを汲んでいるかんじ。なるべくばしっとした雰囲気にしたかった。


38 マグカップ割れた理由を大声に押し付けている(もう聞こえない)(大声)
この辺り、どんなイメージだったのかお聞きしてみたい。実のところあんまり具体的な背景が浮かばなくて(マグカップは誰のものなんだろう?どこにあるんだろう?等)、昨さんがどうやって繋げていっていたのか気になるなあと思っていました。


39 聞こえないふりでずんずん歩いてく振り向かないで 空が高いね(聞こえない)
35・37の流れを汲んだ短歌。わたしの短歌単体としては作れていると思うんですが、割とぶちぶち切れるというか、昨さんの短歌からはうまく繋げられていないなあと思います……反省点。


40 雨降りの空が言うには確率で当てないことも出来るらしい(空)
何となく「空」が摘まれるのが意外だった。でも改めて見返すと前の短歌、動詞ばっかりだな……。普通に作ると、次の方がどうにも摘みにくい短歌になっちゃうことが結構あるので反省してます。


41 話したい人が見つかる確率の出し方 簡単 なんてサジェスト(確率)
「確率」を摘みたかった。あと「サジェスト」とか、検索エンジンっぽさを入れ込みたくてこんなかんじに。短歌のなかにそういった要素を入れ込むのが好きで結構やりがち。


42 晒すのは気軽手軽簡単な無理心中 用意できたよ(簡単)
「晒す」だったり「無理心中」だったり、少しひやっとする要素が入っているけれど、最後「用意できたよ」は軽やかで、そのバランスがすごいなあと思う。


43 ご紹介するのは手軽な逃避行、手に手をとって走り出すだけ(手軽)
「無理心中」から「逃避行」へ。創作する上で好きな要素なので、どうしても内容を引き継ぎたかった。


44 手を繋ぐ 享受しないで生きてきて握られるまま返せなかった(手を)
「握られるまま返せなかった」のもの悲しさ、ツボです……。ちょっと切ないかんじ。


45 最後まで返せなかったメールにも名前はあってもう呼ばれない(返せなかった)
なんとなく、いちごつみの最初の方を読み返し、もう一度「メール」を出してみた。そこから繋がっているような繋がっていないような。


46 今日ぐらい最後ぐらいは人がいい 冬は続くよ安心してね(最後)
下の句は冬眠する熊視点、とあとから教えていただいて、!!!となった短歌。好きです。


47 降り続く雨、じゃなくって雪だった。傘はなくっていいよ、それじゃあ(続く)
リズムも文字も崩したくっていろいろやった結果こんなかんじに。「冬」から「雪」への連想、シンプルではありますが自分では結構気に入ってます。


48 手紙にはそれじゃあまたねだけあって紙だけずるいヤギじゃ寝れない(それじゃあ)
ヤギ……??! となった短歌。「紙だけずるい」は何だろう、食べられてしまうことかなあ。「寝れない」のは羊じゃないから……?


49 ずるいねと言ってやれたら(なんだって言うんだ)欠伸もしくは結露(ずるい)
若干手癖が出ている。括弧書き、好きなんですよね……。「欠伸もしくは結露」は語感重視で入れた記憶。


50 ねむいとき欠伸はでない かなしいと涙はでない 一緒にいれない(欠伸)
一周している…!! 遊佐さんのときもそうでしたが、一周するとすごくうれしいきもちになりますね。畳みかけるような「ない」も好きです。



以上、いちごつみの感想+自作を振り返ってみました。やり切った感!
お読みいただきありがとうございました。ご感想などあればぜひお題箱まで。