scrap

短歌と感想ほかまとめ

log:202202 短歌

0203
あるはずのないセンターに駆け込んで足りない夜をやり過ごしたい
遅れてた手紙が届くおもてうら撫でてみてから大事にひらく
無造作に渡してくれた小包があんまりあったかくって困った



0204
街灯は正しくともる 手のなかの、自分のものにはできないことば
階段や横断歩道を行きながらふいに零れるチヨコレイ
全身に纏いつかせて、気付かないふりしてたかったなんていまさら



0205
どうせなら降ってくれれば鈍痛も理由ができて報われたろう
錠剤を水なしで飲む 長引いた喉のつかえを正当化する
手の甲がふれかけただけ(今はもう体温すらも覚えていない)



0206
逆剥けをそうとわかって引っ張った 壊してしまうのなんてすぐだよ
掻きむしる腕や塞いだ耳や目を撫でてく熱があるのならいい
おそらくは会わずじまいになる人はこの遠吠えを聞いただろうか

(連作)
とかさないようにそうっと触るからそばにいること許してほしい
雪だってこぼした声が結晶になって空から手のひらへ降る
滴っていく電線にある雪もきみが堪えたかった涙も
まっさらな雪に足跡つけていくときの音だけ聞こえていてね
頬に降る雪の重みを受けながらステージで見た光を思う
とけてゆくものに名前があることの 冬のにおいを浅く吸い込む
f:id:hashi_716:20220301194631j:plain



0211 題:眠り
綿布団かぶって眠る泥のなか咲かない花の夢を見ている



0213
レトルトのかんたんな熱 泣いたのを火傷のせいとするにはぬるい
かぶりつくファストフードはカロリーの味がしていて安心できる
サンプルのほうがよっぽどおいしそうつぶれた目玉を半分に割る



0219 短詩の風
(既発表2首)
払っても払ってもまだ髪の毛に花びらつけたまんまのきみだ
春先の息がしにくい現象に名前をつけてくれりゃよかった
(新)
雨粒をくぐってきみへ会いに行くなるべく明るい傘をひらいて



0220 題:どうぶつ
抱きしめたくまの体は綿製で埃と涙のにおいがしてた

濡れている目元は雨のせいだってきみが言うのを黙って拭う
飛ばされていかないように指先を互い違いに結んでおいた



0227 題:愛
‪寒いってこぼせばすぐに貼っていたカイロをくれる母というひと‬
‪・‬
さむがりなひとの隣に立っているさみしいなんて思わないでよ
‪こわがりなきみの睫毛が濡れているきれいだなんてうっかり思う‬



‪0228‬
肩の骨掴んでみてもびっくりはしないくらいに許されている
ぐらついたときに伸ばした指先を迷わず取ってくれてよかった