定時すぎ幕は上がっていることを思い描いて背筋を伸ばす
そこにいるひとの鼓動が聞こえるか、ゆらめく熱は肌に届くか
春先の息がしにくい現象に名前をつけてくれりゃよかった
掃いて捨てられるものだと知っていて拾い集める花びらがある
泣き声を溢さないよう詰め込んだミックスサンドの味は知らない
半券を千切れずにいるチケットをなくさないようそっとしまった
飲み込んでみせるひとだと知っていてそうさせたのは誰だったろう
寝て起きてやり過ごしてくだけなのにそれだけなのに息ができない
傾いた塔から何度落ちたって間抜けは螺旋をのぼり続ける
鳴りやまぬ拍手と待ちわびた人と腕いっぱいの花をください
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202104に作った短歌を連作風にまとめたもの