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短歌と感想ほかまとめ

log:202311 短歌

1107
好きなもの詰め

これっきり最後になりませんように そうは言わないけどまたねって
思っても言わないことが増えていく 薬指だけやけに冷たい
目を伏せる、ゆっくりひらく きみがいてよかった以外わかんなかった



1108
ちいかわ

ひとかけの生姜を刻む間だけ正気に戻る、戻ってしまう
何だってすると思った 釣り上げた魚を捌くのとおんなじで
今まででいちばんおいしかったって言えないまんま冷めてく煮付け


焼き魚・フライ・煮付けもこしらえる手際をずっと、ずっと好いてた
泣いているきみを見ていた ほんとうに欲しかったのはこれなんだっけ
はじめからやり直せてもきっとまたおんなじことをするんだろうね



1118
相互題詠:コスメ 6首

すぐどっか行っちゃうリップばっか買う才能なんてあるはずもない
面の皮(物理)が保つだけの下地ってここ扱ってます?
花の名のついたチークを指先で軽く叩いた 粉々になれ
急募・可愛げのある女の子 何にも叶いやしないんだって
ゴミ箱に放ったときが最高の発色らしい無難なシャドウ
安売りのメイク落としで適当に消してあげるね、ばいばいわたし



1119
何でもないドキュメンタリーの一場面 知らない歌がひたすらよくて


1122
してほしいときはいかにも拗ねてますって唇を尖らせている
このままじゃきみをうっかり壊しそう、なんて思っているのは秘密
目にごみが入ったふりで繰り返す過去最高におそいまばたき



1123
何度目の夕暮れがきてあのひとが星じゃないってやっと気づいた


1128
相互題詠:街 4〜6首

休ませてください、とだけ言う電話 発車ベルってずっとうるさい
無くたって何ともなんなかったって習いたかった泣いたってなに
フィルターでいえばガゼット色あせた路地には僕が立ち尽くしてる
街灯がぶれてほんとうよりきれい乱視でよかったのはそれくらい
輝けない星へ毛布を シャッターが上がるときまでそばにはいたい