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短歌と感想ほかまとめ

log:202206 短歌

‪0601‬ 相互題詠:沈む
沈まずにいてよ太陽あの人の影とこっそり手をつないでる
沈みたい? 尋ねるずるさを愛してた答えはとうに知ってるくせに
沈むなら一緒がいいねどう見てもふたりのせいとわかりやすくて
沈めても華奢な体は なくていい来世は風呂場の黄色いおもちゃ
沈もうとする太陽にもう二度とのぼってくるなと言い置いて幕



0601
こんな顔してたんだっけ 笑ってと言われなくても頬はゆるんで
きみの目にうつったぼくは知っているぼくよりもっといいものだった
焼きつけたあなたをしばらく現像に出さないままに眠らせておく


0604
食べものの好みを告げる気安さでひとに特別なんて言うなよ
あなただけ、なんて言っても簡単にありがとうって手を振るだけだ
お互いに視線は向けているくせに絡まりすぎて先が見えない


0611
まっしろなドロップスだけ舐めている気分の夜だ きみは眠って
「    」と言わないふたりを包んでる遠くの道路交通情報
くっついていないとどこかに飛んでってしまうあなたと手首を結ぶ


0611 てなもんや三文オペラ
あいしてた、あいしてたって口にするほどに言葉は砕けてしまう
冥土へと向かう己に餞を お前はきっとおれを忘れる
卒塔婆だと言われた景色を前にして変わらずに鳴るぼくらのお腹


0617 6月コミュニティ題詠:迷路
右の手は壁に預けててもいいよ空いた片手はぼくにおくれよ
できるだけふたりぼっちでいたくって出口は見ないふりをしている
迷ってて出られないって正当な理由を述べてさよなら世界


0624 6月コミュニティ題詠:傘
置き傘とおんなじくらい軽んじておんなじくらい救われていて
自治体の指示にしたがい家にあるあなたの傘を正しく捨てる
泣きたくて泣いてるきみはコンビニのビニール傘を決して買わない

(以下ちょっと蛇足)
置き傘にするのって、普段は使わないからいいやってものが多いかなと思っていて、でもあることで助かるのも本当、というのが1首め
気付くと溜まっていく傘、処分しようとすると案外捨てにくい(不燃ゴミでいいのか?)でももう持っていたくない、というのが2首め
ビニール傘は手軽に買えるけど、だからこそ買わない、自分が欲しいものをちゃんと選んで買う、という人もしくは決意、というのが3首め
ばらばらに読んでもいいし、3首続けて読んだ場合は、あるふたりの物語になるイメージでした
傘を通して見るふたりの別れの話
傘を何かに置き換えるとわかりやすい?かもしれません


0625 6月コミュニティ題詠:写真で一首
人のこと救えるなんて純粋に言ってしまえるところが長所
切れそうな蜘蛛の糸へと手を伸ばすきみとは息の仕方も違う
構っちゃう方が残酷なんだって教えられないあたりが短所

(以下ちょっと蛇足)
1・3首めを普段やらないかんじのにしてみたんだけどイメージはESとか履歴書でした
長所短所はひっくり返すとどっちにもなるみたいなのを思い出し… ある人から見た「きみ」の長所短所であり、もしかしたらある人自身の話かもしれない
写真から作るの、思ってたより難しかったな〜と思う どうイメージするか、膨らますか、ていうところでつまずいたのかも
中心にある光の部分が印象的だったので 周りを照らすものって、いいもののはずだけどどうしても受け入れられないとか、かえって疎ましいみたいなことあるよね というところからこんなかんじになった
(写真は@eclipse_pieniさまより)