生きるのが下手だね人とまたねって別れたあとの反芻のくせ
霜焼けになるぎりぎりの爪先で確かめている銀河の温度
おやすみとやさしく花粉を拭われたカサブランカの清潔な白
ちょっとだけ乱視が入った目で見てるそのまま写すレンズがほしい
息の根を止める手つきはこんなふう Ctrl+Alt+Del
いるはずのひとの気配が薄まって街は彩度をしずかに落とす
指先の冷えはぼくだけ知っていてスポットライトで眩む壇上
人間は月が真実パンケーキであることにまだ気付いていない
ぎこちない会話は宙に浮いたまま右から左へ流れていった
夢だってわかってるのに覚めなくてそもそも今は夢じゃなくって
圏外のぼくを呼び出すコール音ばかりが耳にこびりついてる
悲しげに泣いてるきみが見えていいものかぼくにはもうわからない
手品師のそぶりで軽く渡された花の居場所はこれから決める
抑揚が思ったよりも似てきてることは言わずに数度目の春
あのひとの配色ばかり覚えてる この青いちばんすきだったよね
一、二回肩に触れたら離れてくだけの温度に救われている
そのうちに消えちゃう声とわかってて書きつけずにはいられなかった
真夜中に目覚めてぼくの内側できしきしと泣く背骨をあやす
街灯とテールランプと遠い月ごっちゃになった道を帰った
まだ生きています。おそらく。何事もなければ。手紙、届きましたか。
・・・・・
202101-02に作った短歌を連作風にまとめたもの