1231-0103
滅んでる町に残ったスーパーで正月用のいちごを買った
暗がりの先に突然現れた郊外型のファミマでセーブ
残された時間は見ないふりをして頭痛薬だけ飲んでおやすみ
生きるのが下手だね人とまたねって別れたあとの反芻のくせ
0104
スタバには噛まずに注文できるだけ余力がないと行けない決まり
袋ありますレシートはいりませんくらいは言えるファミマに入る
もう何も口を聞きたくない夜は紅茶花伝を駅のホームで
0105
満ち足りてしまった真っ直ぐ改札を出てきたきみと目があったとき
「そういえばあれどうなった?」年末のおしゃべり覚えてくれてたんだね
話したいことってこんなにあったんだきゅっと上がった唇の端
0106
ぶつかってみないと自分の大きさがわからなくってあの子で試す
ほらご覧、車両とホームの境目にアリスが転がり落ちて消えちゃう
粉々に飛び散る皿であったものどうして急に手を離したの
0107
在席を示すあかりがいつまでも灯るあなたに会ったことはない
まだ生きています。おそらく。何事もなければ。手紙、届きましたか。
0108-09
Out of Service バスには帰りつく場所があること羨んでいる
神さまにこうべを垂れる混み合ったバスの座席に身を埋めつつ
0110
音程は知らないところをふらついて、それでもあなたの歌だ、たしかに
0111
イヤフォンの音が薄れる鉄橋の上を列車が渡りゆくとき
越県をしてしまってる今まさに見えたおそらくあれは富士山
かつて川でありいつかも川になる草原に立つ人の濃い影
0112-14 東京キネマ倶楽部で見た日食なつこさんのこと
番号が呼ばれるまでに嗅ぎ慣れる誰かの吸った煙草のにおい
手のひらを開いて見せたちっぽけなコインに落ちる橙の影
ざわめきは静かにやんだ鍵盤に触れてあなたが息をしたとき
0115-17
いけにえを捧げてここに生き残る耐久性に優れたマスク
間引かれたソファーにくくりつけられたアンパンマンは名を呼ばれない
アクリルを挟んで話す告解をする側に立つ下手な小芝居
0118-20 1/20配信のこと
まばたきを惜しんでじっと眺めてた画面に満ちる文字は流星
一、二回肩に触れたら離れてくだけの温度に救われている
人の熱、耳を震わす歓声を、どうかその手に、持ち余るほど
0121
幸福は大概油で出来ていて掬った手からすべり落ちてく
数時間前はあんなにすきだった、はず、すきだった、喉がただれる
いつまでも残ったままの紹興酒あおって大崎行きの終電
0122
あたらしい年には雪が降るという花と見紛う真白い雪だ
0123 CDTV ライブライブ サンボマスターとジャニーズWEST
笑うのと泣くのは似てる突き上げた拳が影を切り裂きひらく
ステージへ、きみの居場所に立ってくれ 声果てるまで歌っておくれ
あかるさを無駄だと笑うやつがいたなら呼んできて肩を組もうか
0124
十字架につけろと叫ぶ愚かさをおまえは何回だって忘れる
なんだってあなたはひとになれないの(そんなのわたしがいちばんしりたい)
復活は死んではじめて出来るからまずはみんなの声で殺して
0125-26 お題:眠る、眠らない、眠れない
くたびれた寝巻についたそのひとの匂いを肺に満たして眠る
明日って来なくてもいい真夜中のだあれもいない街を横切る
眠れずに繋いだままの電話からたまに聞こえるふやけた返事
0127 お題:誰かのビニール傘
置き傘の中からなるべく目立たないビニール傘を盗んで帰る
雨の日は傘で突き殺されるから苦手だという駅のゴミ箱
街中の色を映したビニ傘は元からそういう模様みたいで
0128
春はまだ遠そうなのに花びらが うそ、雪だった、ふわふわの雪
やわらかな紙で折られた花飾りが空にまかれて雪と呼ばれる
0129
Excelのフォントの左すみっこにいる灰色は冬の空です
あのひとの配色ばかり覚えてる この青いちばんすきだったよね
0130 あるマジシャン
このとおり種も仕掛けもありません嘘かほんとかお好きなほうを
指先の冷えはぼくだけ知っていてスポットライトで眩む壇上
抜き取った手札はエースかジョーカーか見届けるまで引かないたちだ
0131
人間は月が真実パンケーキであることにまだ気付いていない
まっしろの色画用紙を丸く切り空に浮かべて反応を見る
作りものみたいと指差す満月は本物である○か、×か
1日1首作ることを目標に、もし作れなかったら別日にまとめて作る、で1ヶ月続けていました
ゆるゆるではあっても何とか達成できたのでよかった!この先もできる限り続けていきたいなあと思います