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短歌と感想ほかまとめ

log:202111 短歌

1115

初句:泣かないで

泣かないで やさしくなんて聞こえない声しか掛けられなくてごめんね

このひとの許せなかったところさえすぐには思い出せなくなった

傷ついてやることはない さかむけを清潔な手で静かにさわる

わかってたなんてつぶやくはじめから裏切り者を知ってたていで

 


1116

終わらせて楽にしてくれ 吸い込んだ空気が肺に刺さって痛い

目薬をさしても視界はくもっててはじめて泣いてることに気づいた

これでいい呪文をきみに授けよう上手に諦められますように

 

log:202111 アイドル短歌

20211105

Snow Man 渡辺翔

お誕生日おめでとうございます!

 

わかってるなんて言ったら傷つけることもわかってるけど声に出す

正体を明かせ恐れのまんなかへ突っ込んでって暴ききろうぜ

シュガーレスあまさは不意に目を覚ましくちびるの先かすめていった

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20211110

Snow Man「僕の彼女になってよ。」

 

短針が回り切るまであと少しきみの視線に気づかないふり

音もなく消されたあかり香水のにおいばかりが強まっていく

まだ何も言ってないのに震えてた唇は今どちらのものか

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20211113

Snow Man 深澤辰哉

anan No.2268 「会話の先導者」

 

騙されてほしくてほんと匂わせるあげちゃったって惜しくないこと

景品が狙ったとおりに落ちるのを見てたあなたが好きとつぶやく

言うことのひとつひとつに返される声は日向とおなじ温度で

指先で撫でた氷がとけていくだめにする気はまるでなかった

どこまでを許すか決めて ワイシャツのボタンは全部外せてしまう

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20211117

Snow Man「secret touch」

 

ためらって頬のあたりで揺れていた視線の熱は僕と同じだ

重なった影はあんなに近いのにほんとは爪先さえもふれない

全身が脈打つ音がきみからも同じリズムで聞こえてほしい

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20211127

Snow Man 阿部亮平

お誕生日おめでとうございます!

 

当たりくじ引く瞬間にわき上がる熱をぼくらは絶え間なく生む

あざやかな証明終了 平静に告げて微笑むきみに勝てない

リタイアを口にしないで生きられる手段を弾き出してけ、頭脳

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雑記:KANJANI' S Re:LIVE 8BEAT(横浜アリーナ)

  • わたしにとっては2年以上ぶりになる、関ジャニ∞のライブ 生で彼らの姿を見られて、ほんとにほんとにうれしかった
  • 無観客でのライブ配信から少しずつ有観客での開催になって その間ずっと、マナーを皆が守って、安全に開催できてきたことが認められた結果、フルキャパでの開催になった、という話があった 間引かれていない状態でのライブ、たった2年前にはあたりまえと思っていた景色がまた見られてほんとにうれしい
  • まるちゃんの挨拶(11/28昼)エンタメは本当に必要なのか考えていた 皆がエンタメを必要として、守ろうとして、その結果が、有観客でのライブ開催であり、フルキャパでの実施である というところから「(これからも)戦っていきましょう。誰も傷つけないように」と続けたのが ほんとうに大好きだった
  • 大切なものを守るのに戦う、けど、それは「誰も傷つけない」ためなんだなって ここでその言葉を選ぶのがもうどうしようもなく好きで 加えてそのあとに「大事にしようね、お互い」と続けたのも、その声のやわらかさも こまかな話の流れとか言い回しは違うと思うけど でもとにかくこういう考えかた この言葉の選びかた をする人なんだなあと思って ほんとに大好きだ
  • エイトの横アリ公演、フルキャパで実施できて本当によかったし このあとも、他のグループやライブもきっと(明言はできないのだろうけど、可能性はある、というニュアンス)、という話もあって どうか続いていってくれ、とほんとに思った
  • 声が出せないので、拍手もしくはペンラを振ることしか出来ない中「皆さんの声をいただいてますんで」と言って(おそらくは)過去のライブ映像に収録されていたファンの声援がいいタイミングでかけられたの、なるほど??!ってなってしばらくツボに入ってた
  • でもあれとてもよかった パフォーマンスする側も、見ている側も、やっぱり声があるのとないのじゃいろいろ違うと思うし ただ、今は絶対に出さないけど、どうしたって声が出したくなる 歌いたくなる いつかの自分たちの声を聞くのではなくて それが叶うよう各々努力するしかないのだけど
  • 5人に生で触れるのが初めてで どうしても馴染まなく感じてしまうのかなと正直なところ思っていた でも実際に見て、耳慣れないところだったり記憶と違ってさみしく感じたりということは少なからずあったけど 何もかもだめなわけじゃなかった、変わらずに好きだった、のが、個人的にはとてもほっとした
  • はじめ見始めたときは だいじょうぶ、思ったより平気だ、と感じていたのに RAGEを聴いているうちに何かが決壊したのかぼろぼろ泣いてしまった あと 勝手に仕上がれと象はほんとに、どうしたって気持ちがたかぶる
  • 勝手に仕上がれの「終わんないでTonight」も象の「10年後またここで会おうよ」も かつてこの曲を彼らが歌っていたときと今って、ほんとに何もかも違って、それこそあのときに思った10年後は絶対こうじゃなかっただろう
  • そしてそれは今も同じで 今思う10年後が、そのまま10年後にきちんとあるかなんて、もう誰にもわからない けど彼らはこの曲を歌うし わたしは何年か前に聴いたのと同じようにまたこの曲を聴いて、終わんないでと思うし、10年後のことを願ってしまう どうしようもなく
  • ぐちゃぐちゃになりながらも まるちゃんはめちゃくちゃに格好よかった、見られてよかった やっぱりこのひとの声や振る舞いが大好きだなあと思った なにより楽しそうにベースを弾いていたのが みんなそうだけど、音楽を、バンドをやっていて楽しいんだ、と見ていてわかって ほんとにうれしかった

10首連作「フォーカス」

半券を千切れずにいるチケットをなくさないようそっとしまった

うっすらと曇りつづける春先の空にまぎれて消えた花びら

ほんとならあなたへ振れた手のひらの行き場がなくてしずかに下ろす

つっかえた喉の奥ではいくつもの言葉が息を引き取っている

かみさまがいるなら二度と誰ひとりあの空席を見ませんように

かなしみはなくていいです出来るならずっとやさしくあってよ、世界

誰ひとり聞くことはない歌声が不織布のなか染み込んでいる

揺らされるライトがきみの目にうつるその瞬間を残したかった

傘越しに見上げた雨は明るくてこれならきっとすぐにやむだろう

ぼくら立つ場所には絶え間ないひかり とびきりのよいものになりたい

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元々は「たにゆめ杯」に応募したもので、10首1篇・未発表作5首以上で構成されていること、というルールを元に、1・5・6・10首目が既発表/それ以外は新たに作ったもので構成しています

また、短歌とアイドル短歌を混ぜても成立するのか試したい、という考えが個人的にあったので、5・6・10首目はアイドル短歌として作り発表していたものを持ってきていました

ちなみに、5・6首目はSnow Man 深澤辰哉さん、10首目はSnow Manをそれぞれ主題において作ったものです

去年からずっと考え続けている、なくなってしまった、止まってしまったさまざまなライブや舞台のことについてひとつの形にしたいと思っていたため、ライブなどが以前の状態に近付き始めたタイミングで連作を作れたことは、区切りとしてよかったかな、と感じています

(応募作品である、ということを考えると、まったく票には結び付かなかったので、ひとつも結果は出せていないのですが、評価を気にすると何も作れなくなる人間なので、今時点ではあまり考えないことにします)

改めて見てみると、連作の中で意図せず同じ言葉を使ってしまっているなあとか、テーマが掴みにくいなあとか、いろいろ粗が目立つので、それはこれからの課題として……連作の構成を考えるのは楽しかったので、まずはシンプルに、それが何よりよかったなあと思っています

 

 

 

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2020年の春からこちら、なくなってしまったライブや舞台、イベントは本当に、数えきれないほどあって、個人的な話として、チケットを取っていたのに潰えてしまったものもかなり多い(関ジャニ∞のツアーも、Snow Manのデビューツアーも、日食なつこさんのライブも、丸山隆平さんの舞台だって、ぜんぶそうだ)

どうにもならないことは分かっていても、悲しかった、苦しかった、腹立たしかった、いくつもの感情はずっと自分のうちにあって消えてくれない。折り合いをつけるしかない、とはわかっていても。

さらにいうなら、わたしが苦しいと思うよりもっと、舞台に立つ人たちはより苦しく感じているだろうことも、この1年、2年近くの間に、さまざまな媒体を通して感じていたし、やりきれなく思っていた。

そういういろいろなことを、何か思うたびどうにもならず、ぎこちないながらも短歌のかたちにしてきていて、それは特に2021年の春、多くの舞台が延期または中止になった頃が一番多かったように思う。

そういった時期から、今は段々と元の状態に戻りつつある。もちろんすべてが解決したわけでも状況が完全に好転したわけでもないけれど、少しずつでもやれることをやって、どうにか、エンタメを途絶えずに続けていこうとしている。エンタメは不要ではないと示そうとしている。

10月、いくつかライブや舞台に行くことができた。一度はなくなった、有観客のライブ。座席が間引かれていない舞台。そこにいられることがうれしかったし、なによりも舞台に立つ人の目に、観客の姿が映ることが、誰もいない座席を見ないで済んで、よかった、と思った。

そういう感情を、光景を、本当にただの主観でしかないのだけれどかたちにして、覚えていられたらいいと思って、ひとつずつ歌を作ったし、ひとつの連作にまとめていった。不器用なところばかりだけれど、あるかたちに出来たことが今はうれしい。

 

log:202110 短歌

1012

母音が全部aの短歌

あなたなら探さなかった鮮やかな傘ははなから刺さったままだ

墓は空あなたはばかだ硬かった体は彼方たまらなかった

バーターは泣かなかったが花束はまさか触らなかった ばかだな

わがままなあなたが泣かなかったから真赤な薔薇は枯らさなかった

墓はまだ荒らさなかったあなたがた罠だったなら真っ逆さまだ

やわらかな肌はなかなか甘かった噛まなかったら分からなかった

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1023

F.A.D YOKOHAMA

天井へ伸ばした腕でドロップの色したステージライトにさわる

マスからは出ずに踊った好きだって叫ぶ代わりに手を打ち鳴らせ

ぬるまったハイネケン缶撫でている指の先まで伝わる鼓動

 

log:202110 アイドル短歌

20211004

Snow Man「Sugar」

 

真っ暗なまんまでいいよお砂糖とスパイス香る指に噛みつく

もういっぱいだなんてきみも大概だぼくには全部くれないくせに

何事もなかったように塗り直すリップの色を落としたかった

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20211009

10/8素の日常(目黒蓮)ほか

 

もう二度と見たくはなくて眼裏の景色をひとつ残らずしまう

残酷としたって声をかけるのがあなたの愛で正しさだろう

ぼくら立つ場所には絶え間ないひかり とびきりのよい生きものになる

 


20211030

シークレットタッチ

 

指の背でかすめるように撫でてったぜんぶ忘れてしまってもいい

耳朶はほんのわずかに冷たいと自分以外の肌で覚える

すぐそばにある体温の思うよりいつから互いに馴染んでたこと

 

雑記:日食なつこ ドリップ・アンチ・フリーズ Tour(渋谷 CHELSEA HOTEL)

  • 今ここで これを見られること 聴けること が、ほんとにうれしくってずーっと泣きそうだった めちゃくちゃ楽しかった!!
  • いろんな変なこと言うやつもいるけど 傷つかなくていい わたしが後ろにずっといるから 守るから って(細かい言い回しは違うと思うけど)話してくれるのを聞いたので もうぜんぶ大丈夫
  • 音の感触 声のかんじ がめちゃくちゃ好きだったな〜〜と思って ほんとに感覚の話になるけど体温、人の気配、ぎゅって抱きしめられたときの、自分と相手の体のかたさやわらかさ を思って 心臓の音を聞いているうちにねむたくなるときみたいな そういううれしさ 安心感
  • 音と声と光と そこに日食さんがいることと 隣に座る人の体温と ぜんぜんなかったときが、叶わなかったときがあって でも今ここには揃ってるんだなあと思うとほんとにうれしくなった ぜんぶ注いでもらおうと思って行って、無事ひたひたになっている
  • ひさびさに生で聴く日食さんのピアノや声がうれしかったのはもちろん 木川保奈美さんのつくられる音がまた心地よくて 日食さんの音とすごーく相性がよい!と思って 聴いててずっと楽しかった
  • ステージにある楽器、どうやって鳴らすんだろう?どんな音がするんだろう?と思って眺めていて こういう響きになるんだ!ってびっくりしたり さらにはまた違う楽器が出てきた?!ってなったり 忙しくも楽しかった…
  • 使われた楽器の特性もあるのかわからないけど 木川保奈美さんの鳴らす音はまるくて大きな粒のようなかんじがして しっかりしてあったかい、木製のおもちゃの手ざわりみたいな 床を伝って足の裏とか 体の表面とかに響くその感触がなんだかすごく好きだったなあ
  • 最初何曲か聴けなかったのだけど 曲の合間で席に着いて、次に始まったのが、まだ生で聴いたことのない、いつか聴けたらすごーくうれしいなあと思っていた曲で(泡沫の箱庭)早々にいろんなきもちでいっぱいになってしまった