1115
初句:泣かないで
泣かないで やさしくなんて聞こえない声しか掛けられなくてごめんね
・
このひとの許せなかったところさえすぐには思い出せなくなった
傷ついてやることはない さかむけを清潔な手で静かにさわる
わかってたなんてつぶやくはじめから裏切り者を知ってたていで
1116
終わらせて楽にしてくれ 吸い込んだ空気が肺に刺さって痛い
目薬をさしても視界はくもっててはじめて泣いてることに気づいた
これでいい呪文をきみに授けよう上手に諦められますように
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初句:泣かないで
泣かないで やさしくなんて聞こえない声しか掛けられなくてごめんね
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このひとの許せなかったところさえすぐには思い出せなくなった
傷ついてやることはない さかむけを清潔な手で静かにさわる
わかってたなんてつぶやくはじめから裏切り者を知ってたていで
1116
終わらせて楽にしてくれ 吸い込んだ空気が肺に刺さって痛い
目薬をさしても視界はくもっててはじめて泣いてることに気づいた
これでいい呪文をきみに授けよう上手に諦められますように
20211105
お誕生日おめでとうございます!
わかってるなんて言ったら傷つけることもわかってるけど声に出す
正体を明かせ恐れのまんなかへ突っ込んでって暴ききろうぜ
シュガーレスあまさは不意に目を覚ましくちびるの先かすめていった
20211110
Snow Man「僕の彼女になってよ。」
短針が回り切るまであと少しきみの視線に気づかないふり
音もなく消されたあかり香水のにおいばかりが強まっていく
まだ何も言ってないのに震えてた唇は今どちらのものか
20211113
Snow Man 深澤辰哉
anan No.2268 「会話の先導者」
騙されてほしくてほんと匂わせるあげちゃったって惜しくないこと
景品が狙ったとおりに落ちるのを見てたあなたが好きとつぶやく
言うことのひとつひとつに返される声は日向とおなじ温度で
指先で撫でた氷がとけていくだめにする気はまるでなかった
どこまでを許すか決めて ワイシャツのボタンは全部外せてしまう
20211117
Snow Man「secret touch」
ためらって頬のあたりで揺れていた視線の熱は僕と同じだ
重なった影はあんなに近いのにほんとは爪先さえもふれない
全身が脈打つ音がきみからも同じリズムで聞こえてほしい
20211127
お誕生日おめでとうございます!
当たりくじ引く瞬間にわき上がる熱をぼくらは絶え間なく生む
あざやかな証明終了 平静に告げて微笑むきみに勝てない
リタイアを口にしないで生きられる手段を弾き出してけ、頭脳
半券を千切れずにいるチケットをなくさないようそっとしまった
うっすらと曇りつづける春先の空にまぎれて消えた花びら
ほんとならあなたへ振れた手のひらの行き場がなくてしずかに下ろす
つっかえた喉の奥ではいくつもの言葉が息を引き取っている
かみさまがいるなら二度と誰ひとりあの空席を見ませんように
かなしみはなくていいです出来るならずっとやさしくあってよ、世界
誰ひとり聞くことはない歌声が不織布のなか染み込んでいる
揺らされるライトがきみの目にうつるその瞬間を残したかった
傘越しに見上げた雨は明るくてこれならきっとすぐにやむだろう
ぼくら立つ場所には絶え間ないひかり とびきりのよいものになりたい
・・・・・
元々は「たにゆめ杯」に応募したもので、10首1篇・未発表作5首以上で構成されていること、というルールを元に、1・5・6・10首目が既発表/それ以外は新たに作ったもので構成しています
また、短歌とアイドル短歌を混ぜても成立するのか試したい、という考えが個人的にあったので、5・6・10首目はアイドル短歌として作り発表していたものを持ってきていました
ちなみに、5・6首目はSnow Man 深澤辰哉さん、10首目はSnow Manをそれぞれ主題において作ったものです
去年からずっと考え続けている、なくなってしまった、止まってしまったさまざまなライブや舞台のことについてひとつの形にしたいと思っていたため、ライブなどが以前の状態に近付き始めたタイミングで連作を作れたことは、区切りとしてよかったかな、と感じています
(応募作品である、ということを考えると、まったく票には結び付かなかったので、ひとつも結果は出せていないのですが、評価を気にすると何も作れなくなる人間なので、今時点ではあまり考えないことにします)
改めて見てみると、連作の中で意図せず同じ言葉を使ってしまっているなあとか、テーマが掴みにくいなあとか、いろいろ粗が目立つので、それはこれからの課題として……連作の構成を考えるのは楽しかったので、まずはシンプルに、それが何よりよかったなあと思っています
・・・・・
2020年の春からこちら、なくなってしまったライブや舞台、イベントは本当に、数えきれないほどあって、個人的な話として、チケットを取っていたのに潰えてしまったものもかなり多い(関ジャニ∞のツアーも、Snow Manのデビューツアーも、日食なつこさんのライブも、丸山隆平さんの舞台だって、ぜんぶそうだ)
どうにもならないことは分かっていても、悲しかった、苦しかった、腹立たしかった、いくつもの感情はずっと自分のうちにあって消えてくれない。折り合いをつけるしかない、とはわかっていても。
さらにいうなら、わたしが苦しいと思うよりもっと、舞台に立つ人たちはより苦しく感じているだろうことも、この1年、2年近くの間に、さまざまな媒体を通して感じていたし、やりきれなく思っていた。
そういういろいろなことを、何か思うたびどうにもならず、ぎこちないながらも短歌のかたちにしてきていて、それは特に2021年の春、多くの舞台が延期または中止になった頃が一番多かったように思う。
そういった時期から、今は段々と元の状態に戻りつつある。もちろんすべてが解決したわけでも状況が完全に好転したわけでもないけれど、少しずつでもやれることをやって、どうにか、エンタメを途絶えずに続けていこうとしている。エンタメは不要ではないと示そうとしている。
10月、いくつかライブや舞台に行くことができた。一度はなくなった、有観客のライブ。座席が間引かれていない舞台。そこにいられることがうれしかったし、なによりも舞台に立つ人の目に、観客の姿が映ることが、誰もいない座席を見ないで済んで、よかった、と思った。
そういう感情を、光景を、本当にただの主観でしかないのだけれどかたちにして、覚えていられたらいいと思って、ひとつずつ歌を作ったし、ひとつの連作にまとめていった。不器用なところばかりだけれど、あるかたちに出来たことが今はうれしい。
20211004
Snow Man「Sugar」
真っ暗なまんまでいいよお砂糖とスパイス香る指に噛みつく
もういっぱいだなんてきみも大概だぼくには全部くれないくせに
何事もなかったように塗り直すリップの色を落としたかった
20211009
10/8素の日常(目黒蓮)ほか
もう二度と見たくはなくて眼裏の景色をひとつ残らずしまう
残酷としたって声をかけるのがあなたの愛で正しさだろう
ぼくら立つ場所には絶え間ないひかり とびきりのよい生きものになる
20211030
シークレットタッチ
指の背でかすめるように撫でてったぜんぶ忘れてしまってもいい
耳朶はほんのわずかに冷たいと自分以外の肌で覚える
すぐそばにある体温の思うよりいつから互いに馴染んでたこと